森山中編 | ナノ

運命ってなんだ

さーって、明後日は県大予選三回戦か……やっぱりそろそろ何か差し入れ持っていたほうがいいよな。何を渡せばいいだろうか。こういうのは選手に聞くのが1番いいかな。



私はこの学校のどこかにいるであろう、森山を探した。
普段は教室にいることが多いのだが、今日はいないみたいだった。さて、昼休みにあいつが行きそうなところか、また運命の相手でも探していたりするのだろうか



ふらふら学校を歩いていると人通りの少ない廊下で森山を見つけた。
「森山!」と声をかけるのをやめて本当によかった。






森山は女の子と一緒にいた。
雰囲気から告白現場だ。
しかも相手の女はうちのクラスの黒髪の女で、森山が運命の相手だと言っていたやつだ。



あはは、よかったな森山、遂に運命の相手が自分からお前に話しかけているぞ。そうかそうか、本当にお前の運命の相手だったんだな。よかったじゃないか。黒い髪でおしとやかでお前のドストライクだもんな。本当によかったな。
うん、でもさ、あんな女なんかより私のほうがよくお前を知っているはずなんだけどな。あんな女が森山を見つけるよりも先に私はお前が好きだったし、ずっと沢山いろんなことしたのにな。ははっなんか笑えてきたぞ。全く運命なんてよく言うよなんだそれ。
この間眼中にないって諦めようって思ったばかりなのにな。あのまま諦めていればこんなにショックじゃなかっのかな。あのときやっぱり自惚れちゃいけなかったんだ。最初から勝負なんてついていたのに私がずるずる引きずったから悪いんだ。
あーあ段々涙出てきそうになってきたぞ。しっかし運命ってのは残酷だな。私よりあんな女が森山の隣に立つなんて。
つうかこんなとこにいるの見つかったら嫌だな。さて、来た道でも戻るか。



私はどうもこういうときにとっさに行動ができないらしい。頭の中でずっとぐるぐる考えていざ動こうと思ってもなかなか動かない。
ああ、視界が悪いな。あれか、涙がたまってんのか、なるほどな。こんなところ誰かに見られたら困るぞ。そうだとりあえずトイレに入ろう



そう思い歩き出すと一緒に涙が溢れた。



「くっそくっそ……」



早く、動け。誰かに見られちゃだめだ。特に知り合いはダメだ。会ったら面倒くさくなる。こんな頭じゃいい理由も思いつかないんだから。




「ミョウジ?」




ほらみろ、知り合いが現れたじゃないか



「こ、ぼり」
「どうした?転んでどっか痛いのか?」
「転ぶ、とか、そんなへま、わたしはしな……い」


泣いちゃダメだって思うのに涙は止まらなかった
なんにも言わない私に小堀は近づきそのまま私の頭を優しく撫でた。なんだか余計に涙が出てきた。



「……うっ……もり、やまがっ……」
「うん、分かったよ、分かったから」



森山という単語を聞いて何を察したかは分からないが、小堀は私の頭を先ほどよりも優しくなで、落ち着かせてくれた。
泣いているとどうも言葉を発することは難しく小堀に伝えられるのは単語くらいだった。それでもなんとか理解してくれたみたいで私は小堀に手を引かれながら人通りのないところまで来た。



場所を変えても私が話せるようになるわけでもなく。ずっと泣いていた。その間もずっと小堀は私の頭を撫でながら「うん、うん」と聞いてくれていた。
知り合いに会いたくないと思っていたが、小堀に会えてよかったかもしれない。さっきよりも随分と落ち着いてきた。



どのくらいの間そうしていたか分からないが、私はなんとか落ち着くことが出来た



「悪かったな小堀」
「もう大丈夫?」
「うん、なんとか」
「そっか、よかった」
「小堀、今日、部活終ったら時間あるか?」
「あるよ」
「この間、相談乗るって言ってくれただろ?私部活終わるまで待つし、一緒にマジバでも行かないか?」



小堀が私の誘いを断ることはなく、そのままうなずいて小堀は自分の教室に入っていった。
目が少し赤いのか、友人に「どうしたの?」と聞かれ「いや、なんでもないよ」と笑ってごまかした。ごまかせたかは分からないが。



















あいも変わらずバスケ部の練習時間は校舎が開いている限界まで行われる。
さすがにかなり遅い時間だが、まあ、受験勉強でもしていれば時間が過ぎるのは早く、そろそろバスケ部が終わる時間になった。
私は自分の荷物を片付け、校門前で小堀が来るのを待っていた
春とはいえ、この時間になると外はもう真っ暗だった。



「ナマエ?」


一番聞きたくない声が聞こえた気がした。よし無視をしよう。


「なに?俺のこと待っていたの?」
「は?うぬぼれんなあほ!!小堀だよ、小堀」


お前のことなんて微塵も待ってねえよ、むしろ一番会いたくないやつだよ、死んでしまえ、リア充め!!!



「小堀?なんで、小堀なんかと」
「ミョウジ!悪い待たせた」
「全くだよ」
「あははごめんごめん、じゃあ行こっか」
「おう」


私はぼーっとしている森山を置いて小堀と一緒に歩いた。そういえばお前はリア充なんだから私なんか構わずにあの黒髪女のところ行けよ








「ごめんね」
「へ?」
「森山と一番会いたくないだろうから、先に行こうと思ったんだけど黄瀬に呼び止められて」
「いいよ、気にしないで、昼よりは落ち着いたから」
「マジバでいいんだよね?」
「うん」




私と小堀はマジバへ向かった









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