「高所恐怖症?」
昼食を取りに食堂に来たら、翔の話で持ち切りだった。
朝、翔が木の上にいたのは、少しでも高所恐怖症を克服するためのものだったということだろう。
「こりゃ、重症みたいね。」
「けど、ますぐない?映画、断崖絶壁の王子様だよ?」
「高いとこいっーぱい出るわよー。」
二人して、そんなに翔を追い詰めなくても……。
「うっせーな、これでもなんとか治そうとしてんだよ!」
「水臭いです!翔ちゃん。どうして僕に相談してくれなかったんですか?」
「危険だからだよ!!」
「一切危険なことなんてありませんよー。」
「その微笑みがすでに危険だあああああ!!」
本当に翔と四ノ宮くんは仲良しだなー
「なあ、皆で協力して治してやろうぜ?」
「そしたらオーディション受けられるし」
「手伝ってやるか」
「そうだな!」
私が賛同したとき、後ろから誰かに頭を触れられた
「面白そうな話してるね。」
「うおっ!?」
「レ、レン!?」
ち、近い、
「参加してもいいかな?かっこうの暇つぶしになりそうだ。」
そう言ってレンは私にウインクをした。
この間、部屋にレンが来て以来、事あるごとにレンにからかわれるようになった。
レンの様子だと私が天音だということを知っているわけではなさそうだ。それに、誰にもその話をしてはいない。からかわれたりするのは心臓に悪いけど今のところは助かっている。
「響?そんなに身構えなくても大丈夫だよ?」
「うっせー!」
レンは確実に私をからかって面白がっている。こういうことに関してはすごく性格が悪いと思う。
「皆が協力してくれるなら、頑張ってみるか。」
というわけで、私たちは、皆で翔に協力することになった。
「それでいきなりこれかよ!?」
四ノ宮くんが提案したのは、学園の屋上からバンジージャンプをするというものだった。
いきなりこんなことをして大丈夫なのだろうか。
「ショック療法が1番効くんですよー。」
「いいんですか?」
「た、多分」
音也と春歌もこのままで大丈夫なのか心配しているようだ。
「押すなよ、絶対に押すなよ」
「はーい」
よくある定番のノリのように四ノ宮くんは翔を押した。
「うわああああああ!!!無理じゃねえええ」
「うーん、だめでしたか。」
悲鳴をあげながら落ちていく翔を見ながら四ノ宮くんは冷静に判断した。
続いて、高層ビルの窓ふき現場。
「おち、おち、おちる、おちる、」
風が吹く度に揺れるゴンドラに翔はバランスを崩した。
「がんばれー」
私達はビルの中から翔を応援した。
場所を変えて、長い吊橋に来た。下の川からは大分上にある。
「なんでもいうこと聞くからあああああああ」
「がんばれー」
今度は船の船頭部分に翔を縄で縛り付けた。海からは鮫が頭を出していた。
「俺が悪かったからああああああ!!!」
「がんばれー」
最後に、かなり高度の高いとこにあるヘリから翔を落とした
「てめーら、覚えてろよー!」
ちなみにここまでの費用は全て神宮寺財閥と聖川財閥が払ってくれた。財閥すげー。
「たけーこえーしぬー」
特訓を終えたころには翔は何も話せないようになっていた。
「ちょっと、翔大丈夫なのかな?」
「私、そこで水を買いに行きますね!」
「春歌ちゃん一人だとあれだし、俺も一緒に行く!」
私と春歌ちゃんは翔のために水を買いに行った。
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