01
「で、これが龍也の新作?」
「ああ」
「断崖絶壁の王子様……ねー。なんていうか、龍也にピッタリだね。てか、龍也にしかできないと思います」
「どういう意味だっての」
「あはは、ま、体力作り頑張ってねー。」
「はいはい」



朝、校舎に行く途中、私は龍也と遭遇した
断崖絶壁の王子様という番組で主演をするらしい。龍也らしい作品だ。
本当なら翔といつも学校に行っているのだが、今日は迎えにこなかったため、一人で歩いていたところを龍也に話し掛けられた。翔が迎えにきてくれなかったのは今日だけではない。ここ最近、朝だけでなく、ほかの時間にも一緒に行動していない。














授業を終え、歩いていると木の上に翔がいた。



「翔ー!」



□□□




「うわっ!?」

「翔!?」


やべ、おち、



「いっ……」



誰かに名前を呼ばれ驚き、気づいたときには地面にいた。幸いなことに下が芝生だったため、怪我をすることはなかった。


「翔!?大丈夫か!?」


声の主はどうやら天音だったみたいだ。


「……っだ、大丈夫だ」
「ごめん、まさか落ちてくるなんて思わなかったから」
「いや、響は悪くねーよ……」


響に手を引かれ、俺は近くにあったベンチに座った。


「最近忙しいのか?」
「ん?」
「いやー、あんま翔と一緒にいないなーって思ってさ……ちょっと寂しいなー……なんて」


なんだ、さっきから。いや、別にさっきからじゃないんだ。
ここ最近、響の行動一つ一つにドキドキする、ってなに考えてんだ!俺は!!!
別に手を触るなんてこと大したことじゃねえし、寂しいとか、そんなの別に、あー!くそっ、また変なこと考えて!!



「……じ、実は、オーディション受けようと思っていて……」
「オーディション?」
「日向先生と共演できるかもしれないってやつ」
「すげー!!そのオーディションに受かったら翔の夢叶うじゃん!」


そういって響は俺の右手に両手を重ねた。
右手から響の体温が伝わっ……だから、俺は、何を考えてんだ!響は男で、友達で!!
でも、響は背低いし、筋肉あんまねーし、ほせーし、顔もかわ……ってだから俺はそんな気ねーよ!!だー!!もう!!!


「翔?どした?」
「な、なんもねーよ!?」


やべ、声裏返った……。













「ねえ、翔はさ、なんで日向先生がそんなに好きなの?」


いつもとは違う目をして響は俺に聞いた。


「あー……。俺、小さい頃から身体弱くて、何やるのも自信なくて、でもテレビで先生をみてすげー元気もらったんだ!
だから日向龍也は俺にとって大恩人でヒーローさ!!」
「なるほど……。日向先生に助けてもらったってことか」



「響は?なんで、響也が好きなんだ?」


「響也ってさ、かっけーじゃん。本当に。全部一人でしてて。
ずっと前を向いていて、ずっと先にいて、届かない。どんなに手を伸ばしても、どんなにがんばっても触れられなくて遠くて……。
だから、少しでも、ちょっとでも近づけたらって……。
だから、できること全部したいなーって」




響也のことを話す響がいつもより遠くに感じた。どこを見て、何を考えてそう言っているのか。分からなかった





「ちょっとでも追いつけるようにこれからも頑張ろうな」
「おう!」


手を合わせたが、そのときの響の目はいつもと違っていた。



俺には近づくことができない






prev next

back to top
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -