……結局昨日は蘭丸の曲を形にしてしまった。張り切りすぎた。眠い。
朝食を済ませ、私はクラスに入った。
クラスには既にHAYATOが来ていた。昨日のことの件もあるから、少し目が合わせにくい。まあ、HAYATOは私が天音だなんて言わないとは思うけど。
時間ピッタリに龍也が教室に入ってきた。
「それじゃあ、授業を始める。
お前達は、200倍の受験をきりぬいただろうが、今日からが本当の戦いだ。」
教室に入ってくるなり、龍也は私たちにプレッシャーをかけてきた。
「この学園には、アイドルコース、作曲家コースがある。ようは、ここにはアイドルを目指すやつとアイドルに曲をつくるやつの両方がいる。
お互いを知るために、共に勉強をしていくわけだが、一学期の終わりにペアを組んでもらう。」
ペア……か。
「そして、そのペアの相手はこのSクラスの中に限らない。Aクラス、Bクラス、どのクラスでも相手を見つけていいようになっている。
そのペアで参加してもらう卒業オーディション。優勝したやつにはメジャーデビューの道が開かれるってわけだ。」
へー、優勝すると注目されってデビューするかもってことかー。なるほど。
「一学期の正式なペアを決めるまでは、いろんなやつと知り合って、自分に合ったペアの相手を探せ。」
自分にあったペアを作るための準備期間ってことか!
「そして、一つ大事なルールがある。
そのルールとは、恋愛絶対禁止令!!男女交際は禁止。違反者はどんな理由でも退学だ。」
アイドルたるもの恋愛なんかしたらだめだってことか。にしても、龍也、迫力ありすぎてこわいです。
「そして、早速だが、レコーディングテストをする。今回のテストだけのペアを組むことになるんだが、アイドルコースのやつには作詞。作曲家コースのやつには作曲をしてもらう。
ペアはこっちでランダムに決めておいたんだが、人数の関係で一人余りがでて、そいつには悪いが作詞、作曲両方をしてもらうことになる……。
ま、運も実力のうちだ!!」
ひえー、余りになると両方しなきゃいけないの?そんなの時間がかかるし、めんどくさそう。かわいそうに……。
さーてっと、私は誰とペアかなー。
……私が余り。
……龍也、許さない。
「響一人か……。お前作曲とかできんの?」
う……。来栖くんだけだよ、そんなに優しいの……!ありがとう。
「た、多分なんとかなる……なんとかする!」
「そうか?無理すんなよ?」
「さて、ペアも決まったところで、手本がないのもあれだしな。去年の楽譜がある。誰かに弾いてもらうか……。
作曲家コースのやつで……と、響は作曲、作詞両方しなきゃいけなくて大変だろ。感じつかむために、弾くか?」
……おい、私か。私に頼むつもりか。呪う。絶対に龍也を呪う。
「俺、あんまピアノに自信ないんですが、それでもよければ。」
「おう、じゃ、響頼むな。」
私は龍也から渡された楽譜を見た。
……んー。これ、微妙……。なんていうか技術はあんだけど。うーん……面白くない。
「りゅ、先生、これって本当に去年一番よかったやつですか?」
「ん、そうだが?どうした。」
「いえ、」
この曲が1番かー。……あんまり面白くないなー。こんな曲を私が弾くってこともプロとしてのプライドが許さない。私にも一応プライドくらいある。
「先生が思っているのと違っても、気にしないでください。」
私はピアノに手をのせた。
元はさっき見せてもらった曲だけど、勝手にアレンジさせてもらう。
私だったら絶対にこんなとこで転調しない。ここまで持っていて、最後に盛り上げる。引き際はすぐに引く。作った人には悪いけど……。
「すげー、これが去年の優秀曲?」
「こんなの私作れなーい」
「てか、あれ弾くやつも弾くやつだよな。」
「こんな感じでいいですか?」
私は龍也に笑ってみせた。
「ふーん、やるじゃねぇか。座っていいぞ。」
龍也は嬉しそうに笑った。あの顔見れるなんてラッキー!
ま、一応プロだしね。こんくらいできなきゃでしょ!
「えー、今の曲だが、楽譜とは違うものを響が弾いただけだから、別に今みたいのを作って欲しいわけじゃない。まだなんにも勉強していない状態のお前らを見たいだけだから、気にしなくていいぞ。
一応再試験もあるが、気負わずにしてくれ」
「響!!!」
「ん?来栖くんどうした?」
「お前すげーな!」
来栖くんは私の手を握り顔を近づけた。いや、顔近いです。近すぎます。
「ちょ、顔ちかっ」
「んー?あー、わりぃ。響そういうの気にするやつか。」
いや、気にするだろ。仮にもアイドル目指している男の子だよ?美形だよ?そりゃドキドキくらいするよ。
「最初、響にペアいねーし、大丈夫かなーって思ったけど、これなら大丈夫そうだな!」
「どうなるかは分かんねぇけどな」
「響も今から飯行くだろ?一緒に行こうぜ?」
「おー、じゃ行くか。」
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