押して駄目なら押し倒せ | ナノ


扉間が黙って消えた後、マダラはアリスを連れて人気のない森に移動した。酷く張りつめた雰囲気を纏っている彼にアリスは眉を顰める。

「マダラ、──っ」

何処まで行くのかと聞こうとしたところで体を木に押し付けられて唇が重なる。マダラの舌が口内を這う感覚に再び過去を思い出して全身が強張った。拒もうと手で押せば押すほど強く抱きしめられて体が痛い。唾液が零れる頃になってようやくマダラの顔が離れるが、口元を拭いたアリスは熱を帯びたマダラの目を見て顔を歪めた。

「・・・やめだ」
「は・・・?やめる?」
「ミトに言われて押して駄目なら引いてみろを試していたが、俺がお前を諦めたと勘違いしてお前に寄ってくる蛆虫が増えたからな。近付く男共を何度塵にしたいと思ったことか・・・。やはり待つのは性に合わん」
「・・・そ、か、それでここ最近。・・・だからといって外でこのような行為は感心しないわね」
「俺がどれだけ我慢したと思っている。会話も触れるのも控えていたせいで近頃ではお前を犯す夢ばかり見るようになったくらいだぞ」

そう言って抱きしめてくるマダラを押し返していたアリスだが、不意に腹の辺りに固いものが当たっていることに気付いて顔を引き攣らせる。
いやいやいやちょっと待てこんな所で盛るな外でなんて冗談じゃない。

「安心しろ。ここ等辺は殆ど人の行来がない」
「や、触らないでったら!それから下のソレ押し付けないで」
「断る。今回こそは逃がさん」
「もしかして前に急所を蹴りあげたことまだ根に持ってる?」
「・・・あの痛みは女には分からんだろう」

眉をきゅっと寄せたマダラは胸元を弄っていた手を下に持っていく。目に見えて焦るアリスに口角を上げて下着越しにそこをなぞれば体がビクリと跳ねた。

「あ、あの、冗談よね。こんな所で・・・」
「家まで行くのは面倒だ。それに前に言っただろう、続きは怪我が治ってからだと。あぁ、そういえばお前も蹴り上げてやると言っていたな。どうなんだ?」
「からだっ、くっつけ過ぎで出来ないのよ!」
「ハッ、今回は俺の勝ちだな。諦めろ」

再び口付けながら指を下着の中に滑り込ませるマダラ。直に触れられたアリスは焦った様子で彼の髪を引っ張ったり腕を叩く。人の行来があまりないと言っても絶対ではないし、来たとしてもこんな姿を見られるわけにはいかない。自分で何とかしなければ。

「あまり濡れていないな」
「このっ、変態・・・!」

次第に耳に届いてくる水音に顔に熱が溜まる。小さく吐息を零すようになったアリスは唇を噛んでそれに耐えていた。

「そろそろお前も辛くなってきたんじゃないか?いい加減俺を求めろ。腰が砕けるほど良くしてやる」
「またっ、あの時のような、ハ・・・屈辱とっ、痛み、を味わう、っン、のは御免よ」
「あの時は少しも慣らさずに入れたから痛かったんだ。今回は前よりマシだろう。──濡れてきたから指を入れるぞ」
「何言ってる、いっ、やあぁ・・・!」

ぬぷりとナカに入ってきた異物に小さく悲鳴を上げる。二本三本と指が増えてグチュグチュ音を立てるそこに顔を真っ赤にしたアリスは目を強く瞑った。

「お前はいちいち誘ってくれるな・・・そろそろ入れてもいいか」
「ん、ぁっん・・・駄目に、決まってっン!」

指を抜いて自分のモノを出したマダラがアリスの片足を持ち上げる。身長差から不安定になった体を支えようとアリスはマダラの首に手を回した。男根が秘部をなぞって蜜壺に宛がわれる──が。

「木遁の術」

首に回した手で印を組んだアリスの術によりマダラの体が拘束された。作った隙間からするりと抜けだすアリス。

「、おいアリス・・・!ここまで来てこれはないだろう!」
「同意なしで、しかも外でなんて真っ平御免蒙るわ。そんなに欲が溜まっているなら遊郭にでも行けばいいのよ」
「お前以外の女に興味はない!お前だから無理してでも繋ぎ留めておきたいと思うんだ」
「あら、素敵な口説き文句ね。でもお生憎様。わたくしは婚姻前に手を出してくる男や伴侶となる方以外の男と体を重ねるほど安い女ではないのよ。それに、貴方のことは好いているけれど惚れた腫れたの世迷い言で配偶者を決めるつもりはないわ」

衣服を直したアリスはマダラの拘束を解くと背を向けて歩き出す。しかし次の瞬間にはその腕を彼に掴まれて足を止めた。

「なぁアリス、「マダラ」」
「いい加減割り切りなさい。それと、好いているからといって無理に事を進められてわたくしは怒っているの。そんなに横暴では千年の恋も冷めるし愛想だって尽きてしまうわよ。
暫くわたくしの視界に入らないでちょうだい」
「は、冷めっ!?おい待てアリス!アリス!!」

消えるように去ってしまったアリスにマダラは手を伸ばした状態で固まった。

──怒っているの
──千年の恋も冷めるし
──愛想だって尽きてしまうわ
──視界に入らないでちょうだい

──────────

ドヨーン

「のうマダラ、今度は何があったんだ?」
「どうせまたアリス絡みだろう」

次の日、仕事部屋へ来た千手兄弟は片隅で蹲っているマダラを見つけた。その後ろ姿は今にも灰になりそうなほど悲しみを背負っていて、扉間は面倒くさそうな目を向ける。

「昨日俺が去った後に喧嘩でもしたか」
「襲った」
「「・・・・・」」

しーんとその場が静まりかえる。扉間の「外でか」という問いにマダラが小さく頷けば二人は大きなため息を吐いた。酷く落ち込んでいる様子に、余程堪えることがあったのだろうと簡単に想像がつく。

「マダラお前なぁ」
「久しぶりに触れたら歯止めが利かなくなった・・・。何故嫌がった時点でやめられなかったんだ・・・」
「そんなこと俺達が知るか。昨日の己にでも問うんだな」
「まぁまぁ扉間。今のマダラは傷心なんだ。励ましの言葉の一つでもかけてやらねば」
「貴様等に励まされたところで嬉しくとも何ともない」

重いため息を吐いたマダラは二人に向けていた顔を伏せる。今までにないほど重傷な様子に、顔を合わせた柱間と扉間はどうするべきか頭を働かせた。

「・・・取り敢えず謝ったらどうだ」
「しばらく視界に入るなと言われた。千年の恋も冷めると、愛想が尽きたとも、言われた」
「・・・それはもう駄目かもしれ「兄者!」しかしな扉間・・・」
「弟も守れない、長く好いていた女にも嫌われた・・・。柱間はどちらも手にしているというのに何故俺は」
「マ、マダラッ!そう落ち込むな!弟のことはどうにも出来んが、せめてアリスのことは何とかしてやるから!な!」

情が移ったらしい柱間がマダラと共に号泣して宣言する。その様子を扉間は更に面倒くさそうな目で見ていた。



「まぁまずはお互い頭を冷やす時間が必要だろうな」

柱間とマダラが泣き止んだ頃、三人は仕事そっちのけで顔を突き合わせてアリスとマダラの仲直り大作戦を考えていた(扉間は引きずり込まれただけ)。マダラの話によるとアリスは大分怒っているそうで、恐らく話しかけても無視がいいところだそうだ。

「俺もミトを怒らせてしまったときは暫く時間を置いてから謝る。あぁそうだ!謝るときは贈り物をするといいぞ」
「贈り物?」
「兄者流の機嫌取りだ。菓子やら簪やらを携えて義姉上に土下座している」

情けない、と呆れた目を向けられた柱間は目をそらして苦笑いを零した。相変わらずミトには頭が上がらないようだ。

「ふむ、柱間の言うことを聞くのは癪だが試してみる価値はあるな。だがまず話を聞いてもらえるかどうか・・・」
「大丈夫だ!俺がアリスに話をつけてくる!ついでに欲しいものをさり気無く聞いてきてやろう。同じ贈り物でもやはり欲しいものをもらった方が嬉しいだろうからな。善は急げだ!」
「何を言っている。兄者は仕事が──おい!兄者!」

明るい顔で出ていった柱間に扉間は頭を抱えてため息を吐く。こうなったらしばらくは帰ってこない。また仕事が溜まってしまう。

「苦労しているな、扉間」
「今のお前にだけは言われたくないがな」
「「・・・」」

二人は揃って天を仰いだ。

──────────

「──ということでマダラが酷く落ち込んでいてな」
「あらそう。やはりあれくらい言わなければ反省しないのね」

甘味処にて、柱間に捕まったアリスは大人しくお茶を楽しんでいた。マダラの様子を聞いてコロコロ笑う彼女はあまり怒っているようには見えず柱間は首を傾げる。

「マダラからは話も聞いてもらえなさそうだと聞いていたんだが・・・」
「あれくらいもう慣れたわよ。以前最後までされてしまったこともあるしね。ただ普通に言ったのでは聞かないようだから、ちょっと強く言ってみただけ」
「な、ならばそんなに怒っていたわけではないということか!?」
「ふふ、まぁね。マダラには内緒よ?」
「あぁ、分かった!時間をとってしまって悪かったな!」

「それじゃ」と手を上げて去っていった柱間に、アリスはあぁあの人喋るななどと考えながら団子を口に運んだ。



謝罪は手土産付きで
(マダラ!アリスはそんなに怒っているわけではなかったぞ!)
(どういう意味だ)
(お前を反省させるために強く言っただけなんだと)
(そうか・・・そうだったのか!それで、あいつは何を欲しがっていた)
(あ・・・)

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