押して駄目なら押し倒せ | ナノ


「おぉ!アリス、マダラ!」
「柱間と扉間・・・と、あら」

偶然(?)会ったマダラと散歩をしていたアリスは演習場から呼ばれてそちらを振り返った。いつもの二人を視界に入れて、その隣にいる子供三人に首を傾げる。
「あの二人、子供いたかしら」「いや、いないだろう」という会話をしながら彼らの下まで行くと、三人が揃って膝をついた。

「こいつ等は俺と扉間の教え子でな。まだ七つだが中々に出来るぞ!」
「お初にお目にかかります!猿飛ヒルゼンと申します」
「水戸門ホムラと申します」
「うたたねコハルと申します」
「まぁ、貴方方が。ご存知と思うけれどアリスよ」
「うちはマダラだ。先に言っておくがアリスに手を出、痛いアリス」

余計なことを言ったマダラの腕を強く抓る。挨拶も終わって三人が立ち上がった瞬間、今度はアリスがヒルゼンに向かって跪いた。これには流石の柱間達も目を見開く。

「あ、あの、アリス様!?」
「アリスとお呼びください。お目にかかれて光栄に存じます、ヒルゼン様」
「ええっ!?」

ひどく狼狽えたヒルゼンは柱間と扉間に助けを求めて視線を送る。だが二人も膝をつくアリスに気を取られてばかりで彼のSOSに気付くことはなかった。

「ヒルゼン、貴方何をしたのよ」
「そうだぞ。アリス様に頭を下げさせるなんて」
「オ、オレは何もやってない!」
「アリス、取り敢えず立て。小僧が困っている」

マダラの助言により漸く立ち上がったアリスは、それでも尊敬の眼差しでヒルゼンを見つめていた。初めは困った表情を浮かべていた彼だがアリスの隣から送られてくる凄まじい殺気に顔を青くさせる。

「アリスもマダラも落ち着け。子供達が怖がっている」
「チッ・・・」
「あぁ、ごめんなさい。猿飛という性には・・・まぁ、少々恩があって」

それはもう、特別に。よそ者の自分を里において忍にしてくれた、父のような人なのだ。うんうんと一人で納得しているアリスの隣でやはりじっとりとヒルゼンを睨んでいるマダラ。その様子にヒルゼンは慌てて口を開いた。

「そ、そうだ!アリス様!」
「いえ、アリスと」
「そういうわけには「アリス、と」・・・では恐れながらアリス、さ、・・・アリス、その、コハルはとても貴方のことを尊敬しているんですよ。なので彼女のこともよろしくお願いします」

半ば無理矢理な話題転換だったが、それでも興味を集めたようでコハルに視線が行った。

「え、あ、えっと、女はどうしても軽視されがちですから・・・それをひっくり返す存在のアリス様は憧れで・・・」
「あら、ありがとう。嬉しいわ。確かに女は弱いというのがこの世界の常識だけれどね、本当は本人の努力次第でどうとでもなるものなのよ」

そう、綱手姫とか・・・
──うおらああぁぁ!!!

サクラとか・・・
──しゃーんなろぉー!!

・・・・・。
まぁ、気も力も強い女性は沢山いる。だから、

「貴方がこの時代に忍になることを選んでくれて嬉しいわ。期待していてよ」
「はい!」
「ホムラも、里のために死ぬのではなく、里のために命を大切にね」
「は、はい!」
「それじゃ、頑張って」
「ん?なんだアリス、こいつ等の修業を見ていかないのか?」

背を向けたアリスに柱間が首を傾げた。彼の問いにアリスは一旦立ち止まって振り返って医療忍者の育成に行くと言葉を返す。

「医療忍者、ですか?」
「そうよ、コハル。男女を問わず前線では力を発揮できない忍を集めて医療忍術を教えているの。里に貢献する方法は力だけではないわ。医術が高くなれば戦場での生存率が上がる。認められるにはまだまだ時間がかかるけれど、いづれ里の戦力として活躍するはずだわ」
「他にもアリスは“くノ一部隊”とやらを作るために女を集めて修業をしていてな。くノ一が戦場で活躍する日もそう遠くないかもしれんぞ!」
「フフ、そんな日、来ないのが一番いいのだけれどね」

小さく笑っていったアリスはマダラと共に演習場を出て行った。
医療施設までの道のり、静寂を壊したのはアリスの方で。

「ねぇマダラ、貴方向こうまでついてくるつもり?」
「あぁ・・・」
「それならその殺気をしまって。皆が怖がってしまうわ」
「あぁ・・・」

中途半端な答えしか返してこない彼にアリスは小さくため息を吐いた。たかだか七つの子供相手に何本気で嫉妬しているのだ。
まったく、こんな状態の彼を連れて行ってみろ。皆怖がって医療忍術の練習どころではなくなってしまう。

「マダラ、話は夕食の時にわたくしの家で聞くわ。だから、どこかで頭を冷やしていらっしゃい」
「・・・分かった」

渋々といった様子で消えて行った彼にアリスは胸を撫で下ろした。

──────────
────────
──────

そんなこんなで夕食の時間、言うまでもなくアリスの向かい側にはマダラが座っていた。彼のために作った和食がテーブルに並ぶ。
ポツリポツリと会話を交えながら食事を進めるが、どうにも彼の機嫌が良くない。

「ねぇ、まだ怒っているの?」
「お前にあそこまで慕う人間がいるとは思わなかった」
「あら、敬愛じゃない」
「それでもだ」

むすっとした表情でそう言ったきり口を開かなくなってしまった。せっかく夕食に呼んだのに。
静かなまま食事は終わったが、何故か彼は帰らない。食器を洗っているうちにお風呂まで入ってしまったところを見るに今日は泊まっていくつもりか。此方としてはあんな状態の彼を家に置いておくのは遠慮したいのだが。

「ねぇ、家に帰らないの」
「泊まっていく」
「冗談でしょう」
「こんなくだらない冗談を俺が言うと思うか?」
「言わないと思うけれど、あの、腰を引き寄せるのはやめていただけないかしら。少々身の危険が・・・」
「知っているかアリス。男と夜を共にした場合、危険だと気付いた時には既に手遅れだということを」

頬をなぞっていた手が後頭部に回り、そのまま固定されて唇が重なる。頭が真っ白になって固まったアリスをいいことにマダラは舌をねじ込んだ。

「──んう・・・ちょ、と、ハァ・・・マダラ、ん、やめ・・・」

長い長い口付けをしているうちにアリスの体から力が抜ける。どうにも慣れなくて呼吸が出来なかったらしい。

肩で息をする彼女をベッドまで連れて行くと寝衣を剥いで自分も帯を解くマダラ。そしてその間に逃げようとするアリスの背を上から押し付けた。四つん這いの状態から上半身だけ伏した体形に、アリスは次に起こることを悟って顔を蒼くさせる。

「マダラ、待って、やめて、」
「心配するな。お前が素直に俺を受け入れたら時期に良くなる」

ぞっとするほど優しく囁いて自分のモノをあてがうと、体重をかけるようにして沈め始めた。

「ひっ!?痛っ、い!や˝っ、いや˝あ˝あ˝ぁぁ・・・!い˝っ、ぐぅ」
「アリス、力を抜け。入れづらい」
「やめっ!あ˝あ˝あ!ったい痛い痛い!痛いったら!馬鹿ぁ!」
「力を抜けといった。まだ半分も入ってないぞ」

慣らしもせずに無理矢理ねじ込むせいでアリスが悲鳴を上げる。しかしマダラはそれさえも愉しむように緩急をつけて奥へ奥へと腰を沈めていった。必死にシーツを掻いて足掻く姿がまた良い。


「ん˝ん˝っ!やだっ、い˝やぁ!あ˝あ˝・・・!」
「はっ・・・やっと半分か。おいアリス、少し体重を強くかけるぞ。俺の方も辛くなってきた」
「やだ、いやっ!くっう、ああぁ!!ったい!いたい˝ぃ˝!やっ、あ˝あ˝っ・・・!!」

シーツを握りしめて泣き叫ぶアリスと、ナカのキツさに息を荒くするマダラ。そしてとうとう奥まで届いたようで、マダラが動きを止めて息を大きく吐いた。

「アリス、全て入った・・・分かるか?」
「はっ…はっ…いた、い。なんで、・・・っう」
「お前が俺と結ばれる気はないと言った日から、ずっとどうしてやろうかと考えていた」

こうして後ろから眺めていると酷く支配欲が満たされる。背中から腰にかけてしなる身体も、流れるようにして散らばる金の髪も、痛みに震えてシーツを掴むしぐさも。全て自分がそうさせているのだ。
ニタリと口角を上げたマダラはアリスに被さるようにして耳元に口を寄せた。

「お前を他の男にくれてやる気はない。諦めて俺を受け入れろ」

低く艶のある声で囁いて一度自分のモノを膣口まで引き抜く。やっと気が済んだのかとアリスが息を吐いたところで、今度は思い切り最奥へ叩き付けた。

「───ッ!!!」

目の奥で星が散って声にならない悲鳴を上げる。防御本能により少しだけ濡れたせいか先程よりは抵抗なく入った。マダラはそれに小さく嗤うと何度も腰を叩き付けるようにして挿入を繰り返す。
泣いて拒絶し続けたアリスのナカに精を放ち、体位を変えようと一度自分のモノを彼女から抜いた。

「ほら、次だ。仰向けになれ」
「・・・ごめんなさい、マダラ」

逃げるならこの時しかないと、アリスは横に退けられていた寝衣を掴んでその場から溶けるように消える。一瞬でいなくなった彼女にマダラはまた不思議な術かと舌打ちをして自分の服を整えた。
あれがあの状態で行く場所など限られている。
面倒だが放っておくこともできないと、マダラは靴を履いてドアを開けた。

──────────

ドンドンドン

「客人か?」
「なんぞ、こんな時間に・・・」

玄関から聞こえてきた扉を叩く音に、里の体制を考えていた柱間と扉間は顔を上げた。廊下に出てそちらへ向かうと途中で使用人と鉢合わせする。

「柱間様、扉間様。このような時間に誰とも分からぬ来客です。ここは私が」
「いや、良い。このような時間だからこそ火急の用事かもしれん。俺達で対応する」

そう断った柱間は扉間と共に玄関へ急いだ。弱弱しい音は時々途切れながらもまだ続いている。

「誰ぞ?」
「柱間・・・お願い、入れて・・・」
「アリス!?」

ひどく疲れ切ったその声に驚く柱間を置いて、扉間が急いで扉を開ける。そしてその先にいたアリスの姿に二人は目を見開いた。

「お、おいアリス!どうしたんだその姿!」
「あぁ、扉間・・・ごめんなさい、夜分遅くに」

涙の痕がある顔が扉間を見上げる。文字通り寝衣に腕を通しただけの彼女から彼は顔を逸らした。腿に伝う血と白濁に先に気付いたのは柱間だ。物事の大筋を察して彼女を横抱きにすると風呂場に向かって歩き出す。

「兄者!?」
「とにかくアリスは風呂に入れ。そこの者、大至急用意を」
「は、はい!すぐに!」


──一時間と数十分が経った頃、アリスは千手の使用人に支えられて柱間と扉間のいる部屋に戻ってきた。そしてそこにいる人物に顔を顰める。

「マダラ・・・」
「アリス、取り敢えず座ったらどうだ。そのままでは辛いだろう」

柱間に言われて座椅子に座ったアリス。疲れ切った表情はそのままだが何処か余裕が出来たようで大分落ち着いている。

「あー、事の成り行きはマダラから聞いた」
「今回も間違いなくマダラが悪いな」
「黙れ扉間」
「二人とも今は喧嘩をしている場合ではないぞ。それでアリス、身体はどうだ」
「まったくもって良くないわ。しばらくは満足に歩けなさそうなくらいにはね」

息を吐いたアリスは睨むようにマダラを見る。今回の彼女は流石に怒っているようだ。柱間は困ったように頬を掻くと、一度マダラに視線をやったあと再びアリスに戻した。

「マダラはお前を風呂に連れて行った後すぐに来てな。それから話していたんだ。ほれ、マダラ」
「分かっている。・・・アリス、すまなかった」

柱間に促されてマダラがアリスに向かって土下座する。あのマダラが土下座だなんて、いったいどういう風の吹き回しだ。と、アリスは目を丸くした。次いで柱間に視線で説明を求める。

「ちっとばかり説教をな。流石に、その、初めてだったってことだから色々とショックが大きいだろう」
「特にお前のような気質の奴はな」
「反省している。もう少しお前の体を考えるべきだった」
「着目点がそこ?
 ・・・もういいわ。今日は疲れた・・・。柱間、扉間、騒がせてしまってごめんなさい。それからありがとう。そろそろ帰るわ」
「そうか。それなら誰かに送らせ「大丈夫だから。一人にして」そうか・・・」

アリスは「それじゃ、また」と別れの挨拶を告げるとスッとその場から消える。柱間は頭を押さえてため息を零した。

「マダラ、お前というやつは本当に」
「だがこれであいつは俺のものだ。やり過ぎたと思うが後悔はしていない」
「契りを籠んだからといってあの女が泣き寝入りするとは思わんがな」
「それにこれからのアリスとどう接する。今まで通りとはいかんだろう。最悪一生口をきいてもらえんぞ」
「それは・・・、・・・明日会ってもう一度謝っておく」

微妙な雰囲気のまま、マダラも千手家を後にする。正直謝って許されるようなことではないだろうが、明日の彼女はなんと返事をするのだろうか。

「まったく、マダラは行動に一貫性がないな」
「アリスとマダラが仲違いしたら、マダラが面倒なことになる」
「大丈夫ぞ。アリスは里の人間を見捨てるような奴じゃない。そこを利用するのは心苦しいが喧嘩別れしたままというよりはマシだろう。あとはマダラがもう少し大人になればいいんだがな・・・」

二人そろって“まさにそれだ”と息を吐いたのだった。



絡み合う
(散らす者と、散らされる者)

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