「我愛羅、少し頼まれ事をしてもらっても構わないかしら」 会談が終わり各自が急いで帰国の準備をしている中、アリスは少し申し訳なさそうに我愛羅を訪れてそう切り出した。 疑問符を浮かべて内容によるがと返した我愛羅に、鉄の国にいるらしいカカシ達に五影会談で決まったことを伝えてほしいと頼めば更に疑問を浮かべられる。 「何か用事でもあるのか?」 「用事、というか・・・メイ姫──水影殿と共にダンゾウ達を追おうと思って」 マダラが香燐にサスケの回復を指示していた。逃げたダンゾウを追ってそのまま戦闘にもつれ込む可能性が高い。相手がサスケだけであれば任せておいても問題ないかと思うがマダラも一緒となると放っておくことが出来なかった。 「という事だから、水影殿にはもう許可を取っているわ」 「そうか。・・・少し寄るくらいなら構わない。お前はダンゾウを追うといい」 快く請け負ってくれた我愛羅にアリスはホッと胸を撫で下ろして礼を言う。そして別れの挨拶を告げるとイズモとコテツと共に足早に水影の下へ歩いて行った。 ────────── 枯れた木が立ち並ぶ雪の深い森の中を水影と長十郎、そしてアリス達が走る。ところどころに残る足跡や道に挿してある木の枝を頼りに走って行くが進むにつれて水影とアリスの距離が開いていき、水影が心配げに顔を曇らせて振り向いた。 「大丈夫ですか、アリス様」 「大丈夫・・・。寒いところは少し苦手でね、どうしても体が動きづらくなって。わたくし達の事は気にせず先を行ってちょうだい。青に追いつくまでの距離なら見失う事もないでしょうし」 苦笑いを浮かべて言うアリスに水影は少し迷ってから頷くと足場の枝を強く蹴った。 徐々に五メートル、十メートルと距離が開いてイズモとコテツが少し不安そうな顔になる。が、アリスはそんな二人を宥めて前を行く二人を追っていく。 相手が気配を消しているわけではないしそう離れているわけでもない。心配しなくても見失う事態にはならないだろう。 それからしばらく走っていると、不意に水影達の気配が近くなっていることに気が付いた。立ち止まっているらしい。青を見つけたか。 戦闘の気配がないところを見るにダンゾウ達には逃げられたかまだ追跡中といったところか。しかしまぁどちらにしてもこの人数且つメンバーでは追跡は終了だろう。 そして見つけた水影達。青と水影が向かい合って何かしていた。 ──と、思ったら水影が青を殴り飛ばして、アリス達は何事だと目を見張る。 「あ、あの、メイ姫・・・?」 「あら、アリス様。青は無事見つかりましたわ」 「それは良かった──ではなくて、えっと、青・・・大丈夫?」 「・・・アリス様、里に帰ったらあの感知タイプの忍にいつか殺すとお伝えください」 「ええ!?」 目が据わっている青の物騒な言葉にアリスが顔を引き攣らせる。 いや、悪いのはどう考えても此方なのだが素直に頷けない。かといって断るのも怖い。 肯定も否定もせずに取り敢えず曖昧に笑えば青は疲れたというようにため息を一つ吐いた。 そこにイズモとコテツの声がかかって振り返れば、木の幹に打ち付けられた人形がいてアリスがあれは何だと問う。 「あいつが仕掛けた罠ですよ。攻撃した者を人形に強制的に心転身させる術のようです。体は術者に乗っ取られて、人形に入っている間は動くことも話すことも出来ません」 「まぁ、まぁ・・・もしかして白眼の回収でも目論んでいた? あぁもう、大切な時期にここまで騒がせてしまうなんて」 はぁー、とアリスが深く長く息を吐く。火影から外されるであろうダンゾウにはもう関係なくなることだが、その後を継ぐカカシが信用回復に苦労しそうだ。 がっくりと項垂れて後々の厄介事に頭を抱えていると水影の小さな笑い声が聞こえて改めて申し訳ないと霧の三人に頭を下げる。 「結果青は助かりましたしアリス様がやったわけではないのですからそう気に病まないで」 「でも・・・」 「それよりダンゾウを追ってください。あまり離れると見失ってしまいます」 真剣な表情になった水影の言葉にアリスが「あ」と声を零す。 そうだ、自分達はダンゾウを追っていたのだった。 青にダンゾウ達の場所を聞けば既に豪雪地帯を抜けているとのことで、かなり距離がある。マダラの能力を考えると急いだ方が良いか。 アリスは礼を言うとイズモとコテツを連れて走り出した。
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