巡り会いてV | ナノ

それからまた数日後、アリスとサクラは綱手と共にカカシの病室を訪れていた。

「うむ、問題ない。今日で退院だ」
「ひょっとしてそこのお荷物を早く持って行ってほしいから・・・じゃないですよね?」

身体を診て退院許可を出した綱手にカカシは隣に置かれたベッドを向く。そこには自分の家であるかのように遠慮なく眠りこけるナルトの姿があった。

「ずっと思っていたのだけれど何故此処にいるのかしら」
「ナルトったら、いつでも修行が始められるようにって病室から離れなくって」
「本当は数日自宅でゴロゴロ──いえ、療養してからと思っていましたが・・・読む本もなくなってしまいましたし、ちゃっちゃと修行、やってしまいますか」

綱手が小さく笑って「そうだな」と同意したところで、寝ぼけたナルトが大きな寝言を言う。額に青筋を立ててナルトを起こしに行ったサクラにアリスは苦笑いを零した。

──────────

所変わって演習場──
カカシとナルト、そしてアリスは修行の為そこへ来ていた。

「さて、修行だ」
「へへへっ」
「なんだ」
「いやさ、なんかカカシ先生との修行って久しぶりで・・・なんでかよく分かんねェんだけど、嬉しいんだってばよ」
「確かに、もう数年ぶりになるものね」
「へへっ」
「ハハハ・・・笑ってられんのも今の内だぞ。時間は待っちゃくれないからな」

カカシの言葉にナルトとアリスが真剣な表情になる。

今回の修業の目的はナルトだけの最強忍術を作ることだ。そしてそれにはチャクラの“性質変化”と“形態変化”の二つのテクニックが不可欠。
例えば千鳥──これはチャクラを電流のように“性質変化”し、放電するように“形態変化”させて攻撃の威力と範囲を決めている。
一方の螺旋丸は“形態変化”だけを極めた術と言える。チャクラを超スピードで乱回転させて圧縮する術だから“性質変化”必要としない。

そして螺旋丸以上の術を習得するには“性質変化”が絶対に必要になる。

とここまでカカシが説明したところでナルトはワクワクした表情で目を輝かせた。

「んじゃー俺も螺旋丸にその性質変化ってのを加えたら、あっという間に新術完成しちまうってばよ!」
「あのねぇ、簡単に言ってくれるなよ・・・」
「ナルトったら、貴方まだ性質変化を習得していないでしょう。それに自身がどの性質を持っているかも分かっていないのではなくって?」
「へ?どの性質って?」

隠しもせずに疑問を浮かべるナルトにアリスとカカシが揃ってため息を吐く。
「そこから説明しなけりゃと思っていたけど」と呆れた口調で言ったカカシが目の前に五本指を立てた。

「基本的にチャクラの性質変化の種別は五種類しかない」から始まった、アカデミーで習った記憶のある基礎授業が始まる。

「──で、お前現在ゼロ。しかもどの性質変化が得意なタイプなのかもまだ分からない。・・・それを、この紙切れで調べる」

忍具入れから数枚の紙を取り出して一枚を抜き取るカカシ。ナルトが紙を凝視しているところでチャクラを送り込めば、くしゃりとひしゃげた。

「これはチャクラに反応しやすい感応紙で、チャクラを吸って育つ特別な木から作られるのよ。サスケも昔これを使ってチャクラ性質を確かめたわ」
「紙にチャクラを流し込めば自分がどの性質かが分かる。やってみろ」

驚くナルトに感応紙の説明をしてから一枚手渡す。意気込んだナルトは集中するように目を閉じてチャクラを紙に送った。

ビリリと破れるような音が風にさらわれる。

「ナルトのチャクラの性質は風みたいね」
「あらゆるものを切り裂き、断ち切る。戦闘力抜群のチャクラだ」
「おおー!俺ってばスゲェー!」
「いや、まだまだ分かっただけだから。さて、いよいよ風の性質変化を身に付ける修行だが・・・しかしそのテクニックを会得するには膨大な時間がかかる。で、その時間を大幅に短縮する方法を俺が思いついてしまったというわけだな。その方法は──」

ここまで話したところでカカシが言葉を切る。近くに一つの気配を感じたところで颯爽と現れたのはカカシ班隊長代理のヤマトで、ナルトは頭に疑問を浮かべて彼を見た。

「この修行は僕も協力するようカカシさんに頼まれたんだ」
「あのさぁ!あのさぁ!ヤマト隊長の木遁ってばどの性質変化になんの?」

話を再開させようとしたカカシを遮ってナルトがヤマトに問いかける。先輩の話の腰を折って申し訳なさそうにしていたヤマトだがカカシに説明するよう言われて渋々頷いた。
「さっそく」と印を組めば見上げるほどの土の壁が現れ、更に印を組めば水が流れてあっという間に滝を作り上げる。

「滝が出来た・・・」
「僕は土と水の二つの性質変化を持っているんだよ」
「え!んじゃヤマト隊長も二つ持ってんの!?」
「上忍クラスになると皆大体二つ以上は持ってる。俺も雷以外にも扱えるしな」

それを聞いたナルトが「んじゃ、ヤマト隊長は木遁も含めて三つ持ってんのか?」と問うが、カカシはその質問に否の答えを出した。

ヤマトが扱える性質変化は“土”と“水”の二つだけ。そもそも“木”というチャクラ性質は存在しないのだ。
ならばどうやって木遁を使うのか。
それは“土”と“水”の性質変化を同時に行い、“木”の性質変化を新たに発生させるという方法をとる。

実際にヤマトが“土”と“水”の性質変化を起こして木遁を使って見せればナルトが感嘆の声を零した。

二つの性質変化を持っている場合、一つ一つを独立して使うのは大して難しくない。が、二つの性質変化を同時に発生させるとなると話は別だ。

「二つの性質変化を同時に扱い、新たな性質変化を生み出す力を“血継限界”っていうんだよ。その言い方くらいは聞いたことあるだろう?」
「うん・・・」
「波の国の任務で戦った白を覚えているわね?彼も氷遁という血継限界を使っていたけれど、それは“風”と“水”の性質変化を用いて“氷”を発生させていたの」
「あれは血継限界を持つ一族だからできる特別な術だ。だから俺の写輪眼でもコピー出来なかった」
「へぇー」

続く説明をうんうんと聞いていたナルトだが、ここで気になったことがあったのかアリスに目を移した。

「じゃあアリスの氷遁とか木遁とかって、どうなってんだ?」
「・・・あら?わたくし、ナルトの前で使ったことあったかしら・・・」
「いんや、サスケから聞いただけだけだってばよ」

そう、自慢話で。更にいえば意中の相手とどれだけ親しいか、どれだけ相手の事を知っているかを競い合っているときに。
別段そういう話をしようとしていたわけではないが、ライバル同士が揃うとどうしてか自分を上に見せたくてそんな下らない事で競っていたのだ。


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