巡り会いてV | ナノ

「そうか。君が新しいチームのメンバーの・・・サイだっけ?よろしくね」
「はい・・・」

病院に到着して、体を起こしたカカシの前に一列に並んだアリス達。ナルトとサイが頬を腫らしてサスケが不機嫌な様子でいるのを見たカカシは一番無難そうなサクラを呼ぶ。

「あの二人怪我してるけど、喧嘩でもしたの?ナルトは喧嘩っ早いから分かるけどサスケまで巻き込まれるのは珍しいね」
「い、いえ何も!みんな仲良いですよ!」
「あ、そうなの。それなら良いんだけどね」

あははと笑ってやり過ごしたサクラは改めてナルトを呼ぶ。それに応えて報告をしようとしたナルトだが、カカシはヤマトから聞いているとそれを遮った。拳に力を入れるナルトとサクラにアリスが少し目を伏せてサスケが眉を顰める。

「ま、大蛇丸とカブトを潰したいならこっちも強くならないとダメでしょ」
「でも大蛇丸ってばエロ仙人とか綱手のばーちゃんと同じくらい強いんだろ。それにカブトも一筋縄じゃいかねぇし・・・チンタラ修行してても一生追い付けねェってばよ」
「俺がただ何も考えずに寝てるだけだと思った?ずっと考えてたんだよ・・・で、思いついた。
 ただし、この方法はナルトに向いている。というより、ナルトとアリスくらいしか出来ないやり方だけどね。その修行でナルト、お前はある意味では俺を超えるかもしれないな」

驚くナルト達にカカシは淡々と説明していく。
それなりの力を手に入れるにはそれに見合った膨大な時間と努力が必要で、すでに出来上がっている術を教えてもらうのでもない。
前途多難と言われてそんな時間はないとナルトが噛み付いた。

「──だから、それを短時間でする方法を思いついたのさ」
「あら、わたくし分かっちゃったわ」
「え、何!何!どうやるんだってばよ」

いくつかキーワードを貰ったアリスが閃いたように顔を輝かせた。
教えてくれとせがむナルトにカカシが口を開く。が、ここで病室のドアがノックなしに開いてアスマを筆頭に十班の面々が入ってきた。

「なんだ、ナルトとサクラじゃねェか」

任務に行っていた二人を見つけてシカマルが終わったのかと声を掛ける。しかし先日対面した不審者に顔を険しくさせた。

「シカマル!ストップストップ!サイは敵じゃねェってばよ!」
「あ?」
「だから──」

雰囲気が悪くなる前にナルトがサイのことを説明する。ぐだぐだと少し続いたが漸く理解が得られたのかシカマルとチョウジは揃って安堵の息を吐いた。

「なぁんだ、そういう事だったんだ。納得納得」
「サイっていいます。どうか呼び捨てにしてください」

「へぇー、なんか結構カッコいいじゃない?少しサスケ君似だし!」
「見た目はね。中身はだいぶ違うから・・・空気読めないし」

いのは頬を染めてサクラに耳打ちするが、サイの中身を知っているサクラは更に声を潜めてそう口にする。
子供達が好きにしていたところでカカシとアスマの方でも軽くやり取りがあったらしい。アスマの「先に焼肉Qへ行け」発言に病室内が沸いた。
ナルトは修行の事が気になって一人カカシに突っ掛るが、どの道退院後からだと一蹴されて肩を落とす。

「よし!アスマ先生の奢りなんだから、ありがたく沢山いただきましょう!」
「「いえーい!!」」
「ほら、サイ。行くわよ」
「え、あ、はい」

面々を見渡し言葉を放って主導権を握ったアリスがサイの腕を掴んで歩き出す。釣られるようにして病室を出たナルト達はアリスとサイを中心にわいわい騒ぎながら遠ざかって行った。

「あぁ、だからサスケの機嫌が悪かったのか」
「は?」
「いや、あのサイって子、“根”だからさ。周りに馴染めなくて四苦八苦する苦労はアリスも良く知ってるだろうし、だからこそあぁして会話の中心に来るようにさり気無く誘導してるんだろうけど・・・今まで一緒にいることが多かったサスケからしたら面白くないだろうなって」
「ははっ、暫くしたら落ち着くだろ」

軽く笑い飛ばすアスマにカカシは肩を竦めた。

──────────

そして此方焼肉Q。
来る途中で父親の手伝いをしなくてはならないと抜けたシカマル以外が机を囲っていた。彼の分までたくさん食べようと張り切ったチョウジだが、自己紹介が先だと脅すように言ういのに涎を垂らして箸を引っ込める。

「えっと、僕は秋道一族の秋道チョウジ。よろしく・・・えーと、サイだっけ?」
「よろしく、えーと・・・デ」

パシッと、皆まで言う前に向かいに座っていたナルトが身を乗り出してサイの口をふさいだ。そしてそのまま小声でデブは禁句だと必死に伝える。
反応したチョウジをサクラが宥めてアリスとサスケが安堵した表情を浮かべる中、サイはあだ名と言うのは難しいと心の中で呟いた。

「あたしは山中花店の娘で、山中いのっていいます!よろしくー!」

そんな面々を置いて今度はいのが少し間延びした口調でにっこり笑って言う。ここでサイは先程のサクラを思い出した。
女の人の場合は特徴をそのまま言えば怒らせることになる。つまり、その逆を言えばそうはならないという事だ。

「よろしく。えっと・・・美人さん」

少し考えて出てきた言葉にナルトはホッとした表情を浮かべた。
がしかし、隣から漂ってきた殺気に顔色を変える。
直後、怒号が店内に響き渡りサイはまたもやサクラの拳に沈められた。

「・・・サイ、大丈夫?」
「はい・・・愛称やあだ名と言うのは難しいですね」
「また敬語になっていてよ。・・・別に無理してそういうものを決めなくても良いじゃない。呼び捨てだけでも十分距離は縮まるし、そもそも本当に仲良くなるには多少なりとも時間がかかるというものよ。一朝一夕で為せることではないのだから焦らずに頑張りましょう」
「はい・・・じゃなくて、うん、そうだね」

サクラが暴れたせいで少し荒れた机を指の一振りで元に戻してみせたアリスは、焼けた肉を見てチョウジに取られる前に食べた方が良いと促す。頷いたサイが網から肉を拾って口に運んだのを見てから自分も箸を伸ばした。

「外で食事を味わうなんて今までしてこなかったから新鮮に感じるよ」
「分かるわ。味よりも安全と栄養が最優先に考えられるところなのよね」
「うん。料理は出てくるまでの過程で色々入れられることがあるし・・・それだったら栄養剤を持ち歩いた方が余程確実に安全と栄養を確保できる」
「摂取に時間がかからないのも長所だわ。わたくしも昔はそうしていたもの」
「その分の時間を有効に使えますしね」

共通する話題で盛り上がるアリスとサイ。
しかし此処で面白くないのはアリスの向かいに座ったサスケだ。先程から机に肘をついて不機嫌そうに二人を見ている。
ナルトはそんなサスケを見てニンマリと口角を上げていた。

「サースケ、相手にされないからって落ち込むなってばよ!」
「うっせぇウスラトンカチ」
「仕方ねぇじゃん。サイってば昔のアリスと少し似てるからさ、やっぱ同じ経験したことある奴の方が付き合いやすいだろうし」
「黙れ。別に怒ったり拗ねたりしてるわけじゃねェよ」

肩に腕を回すナルトをむすっとした表情のまま追い払う。
アリスが社交的で誰とでもそれなりの関係を築けることは知っている。そして誰とでもそれなりの関係が築けるという事は、相手に合わせて自身の波長を変えられるという事だ。
だからこそ一匹狼であるサスケとも長い時間を一緒に過ごせていたのだが、時にそれは悩みともなっている。

相も変わらず話しながら食事を進めるアリスとサイに、サスケは深いため息を吐いた。


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