創設期企画小説 | ナノ


とある木ノ葉の実験施設。
ツバキと扉間はそこで書物や実験ノートと顔を突き合わせながら様々な薬品を調合していた。

「悪いな、せっかくの休日に」
「いいのよ。手伝わせてほしいと頼んだのはわたくしだもの。それにここならマダラも来ないでしょう?」

何故か毎日毎日、偶然、たまたま、ばったり、マダラと出くわすツバキ。ならばと今回は奴の天敵である扉間に助けを求めたのである。流石のマダラも扉間のいる実験室ならば探しに来るどころか選択肢に入ってすらいないであろう。

「それにしても扉間ったら本当に研究熱心ね。今度は何を作っているの?」
「細胞に作用する薬だ。傷の治りを早めるためにな」
「あら、いいじゃない。広く活用できるわ」

顔を明るくさせるツバキに扉間も小さく笑みを浮かべると再び薬品リストに目を落として必要なものを棚へ取りに行く。

「あぁそうだ、ツバキ」
「はい?」
「お前が扱っている薬なんだが、紙に書いてある調合の手順が少し間違っている。120番の液体を入れてから83番の液体を入れるとあるが逆だ。それと83番と120番の間に29番の粉を入れてくれ」
「・・・え、」

スポイトで液体を混ぜていたツバキが声を零して固まる。薬品を探しながら指示をした扉間は戸惑ったような雰囲気を察して謝ろうと口を開いた──瞬間、ツバキの慌てる声が聞こえて振り返った。
試験管からもくもくと上がる煙にすっぽり呑まれるツバキが目に入る。

「お、おいツバキ!」

驚いて駆け寄ろうとするが、止まることなく出続ける煙に足を止めた。このままでは部屋全体に広がってしまう。換気が先だ。
換気扇のスイッチを押してツバキに無事か問えば小さく呻き声が聞こえた。

「動けるか!?こっちだ!」

声を掛ければ気配がゆっくりと近づいてきたため自力で動ける程度には意識があるらしい。だがしかし、煙の中から姿を現したツバキに扉間は絶句した。

──────────

所変わって火影執務室──
柱間は溜まった業務を消化していた。少し疲れてきたし息抜きに賭博場へ行きたいが、弟が戻ってきた時の事を考えると少々面倒くさい。
更に言うとあまりサボっていたらツバキの雷が落ちる。あれは怖い。怖すぎる。忍界のトップは自分だが里の陰のドンは間違いなくアイツだ。

溜め息を付いて改めて筆を握り直した柱間。
しかし突然部屋に子供の泣き声が響いて肩を跳ねあがらせた。何事だ。
顔を上げてみたそこには珍しく困り果てた扉間──と、その腕に抱えられた金髪金目の愛らしい幼子がいて、目を丸くする。

「お前それ、まさかツバキ──」
「あぁそうだ。実はな「とお前の子か! 一体いつの間に!」って、違う!!」

扉間の一喝が響くと同時に腕の中にいる子供の泣き声も多くなった。降ろせと言わんばかりにバタつくのを扉間が慌ててあやす。が、一向に泣き止まない。

「くそ、餓鬼なんぞ扱ったのは弟以来だから勝手が分からん。
 とにかく兄者、こいつはツバキだ。細胞に作用する薬の調合を手伝ってもらっていたんだが手順を間違えてこうなった」
「はー・・・それはまた難儀な・・・」

驚いた表情の柱間が未だ泣き止まないツバキに目を向ける──あ、目が合った。にっこり笑ってやるがフイと顔を逸らされる。
ならばと木遁で音の鳴る玩具を作り出してやるが一瞬興味を見せたもののすぐに泣き始める。それどころか抱え直そうとした扉間の隙をついて身を捩り、その腕から逃れたのだ。
べしゃりと音を立てて床に落ちるが泣きながらも立ち上がって走り出す。が、扉に辿り着く前に素肌の上に一枚だけ着ていた羽織りに足を引っ掛けてビタンと床に叩きつけられた。
ハッキリ言おう。どんくさい。

「お、おい、大丈夫か・・・!」
「来ないでよう! 来ないでったら・・・うわあぁぁん!!おかーさまぁー!」

思わず駆け寄る柱間に泣き喚いて再び部屋から出ようと走り出すツバキ。ようやく戸まで辿り着いたがしかし、ここでもまた何やら問題があったらしく手を掛ける部分を見て固まった。
ドアノブがない。涙声でそう言うとわんわん泣きながら戸を叩き始める。

「ツバキ、それ引き戸なんだが・・・」
「お母様ぁ!うわあぁぁぁん!!おかーさまぁー!!」
「聞いちゃいないな」

若干の呆れ顔でツバキを見る二人。
扉間の腕から逃れる→床に落ちる→羽織に足引っ掛けてコケる→引き戸だと気付かずドアが開けられない。
・・・なんかもう馬鹿っぽくて可愛い。和む。

まるで我が子を見るような目でツバキを見ていた柱間と扉間だが、そろそろ泣き過ぎて脱水症状なり喉を痛めるなりしそうだと距離を保ったまま目の高さを合わせてあやし始めた。
そこへやってくる一つの気配──扉間が顔を顰める。

「おい柱間、餓鬼の声がするが迷子でも預かった、か・・・」

ガラリと開いたそこ、動きを止めた黒と金の目が合った。

ツバキそっくりの可愛らしい子供。
こちらを見下ろす全身真っ黒の強面大男。

目を見張るマダラと、開いた目に涙を溜めるツバキ。
柱間と扉間がしまったと顔を歪める頃には、ツバキは泣きながら執務机の裏に逃げ込んでいた。

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