創設期企画小説 | ナノ


「お疲れ様です、綱手様、シズネ先輩」
「あぁ、サクラ達か・・・マダラも一緒か」

カカシ先生と分かれて病院へ向かえば丁度綱手様とシズネ先輩が出てきた。正直マダラとサスケ君の雰囲気が良くなかったから助かるわ。あ、でも今度は綱手様とマダラが・・・この二人に挟まれるのは遠慮したいからツバキに任せよう。
よろしくの意味を込めてツバキに目をやれば軽く肩を竦めて了解の合図を貰った。

「綱手姫、任務終了の報告に来たわ。はい、報告書」
「ん、あ、あぁ。・・・こういうのは向こうで渡してほしかったんだが」
「やることは変わらねェ。どこでもいいだろ」
「(そうか、サスケとマダラが一緒だからか・・・)」

機嫌の悪いサスケ君を見て綱手様も悟ったらしい。すんなり報告書を受け取るとさらりと確認してOKを出した。それを聞いたマダラが早々に「帰るぞ」とツバキの腕を引く。うーん、任務終わりに薬草の買出しに行くって約束してたんだけどな・・・言い辛いな・・・。

「ごめんなさい、マダラ。今からサクラと薬草の買出しに行くの。もう少し掛かるけれど良いかしら」
「・・・そうか」

あ、分かりにくいけど少し残念そうな顔になった。

────────

病院から各自向かう方向が途中まで同じだという事で、皆で一緒に歩いていた。前を行くツバキとマダラは相変わらず距離が近い。
戦争の時は最悪な敵だったのに目の前のマダラはまるで別人みたいだわ。人をここまで変えてしまうなんてやっぱり恋の力は凄い。

「あぁそうだ、ツバキ。明日は休みだったな。少し鍛錬に付き合え」
「構わないわよ。ふふ、マダラったらチャクラがなくても体術だけで下忍に勝てそうね」
「弱い事には変わりない」
「弱かろうと何だろうと、わたくしは貴方といられるだけで幸せよ」
「・・・ふん」

「羨ましいなー。俺もサクラちゃんとあんな会話したいってばよ」
「ないわね」
「ったく、あれが世界を恐怖に突き落としたうちはマダラだとは思えん」

同感です、綱手様。戦争時は初代でも苦戦したのにツバキが来た途端すぐに解決しちゃったし。ツバキだって全然色恋沙汰には興味なかったのにいつの間にか同期の中で一番早く結婚しちゃったし。・・・ラブラブだし。

そんなこんなで二人を筆頭に歩いていれば、曲がり角の先から忍界大戦のもう一人の元凶がやってきた。うちはオビトだ。あの人昔殉職したはずのカカシ先生の同期なのよね・・・未だに信じられない。因みにオビトもツバキとマダラと一緒に住んでたりする。マダラとしてはツバキと二人が良かったみたいだけど見張りは必要だからって綱手様が。

「おいジジイ、掃除の途中で抜け出すな」
「お前ごときが俺に指図するな。ただでさえツバキとの生活において邪魔だというのに・・・家に置いてもらいたかったら家事くらいこなしてみせろ、砂利が」
「俺だって居たくて居るわけじゃない。万年発情期の糞ジジイと同居なんざこっちから願い下げだ」

・・・この二人って結構仲悪いのかしら。話を聞くに(ツバキ経由でだけど)オビトはマダラに世話になっていたらしいのに。まぁこの二人の場合は家族とか一族とかそういう仲間意識があって一緒にいたわけではなくて、むしろ利用し合っていた関係だったから仲が悪いのは仕方ないのかもしれない。

仲裁に入るのも面倒で全員が一歩下がった状態で見ている間にも二人の口論は納まるところを知らず、だんだんと声が大きくなってきて本格的な喧嘩になってきた。

「だいたい!毎日毎日お前達のやり取りを見せつけられる俺の身にもなれ!
 朝っぱらから砂糖を吐くようなイチャつき!
 ツバキが出て行く時の永遠の別れかのような見送り!
 家を空けている間の『何故目の前にいるのがお前なんだ』という理不尽な八つ当たり!
 帰ってきた時の過度なスキンシップ!
 食事でも風呂でも一々何かやるごとに甘ったるい会話しやがって!
 極め付けが就寝時だ!俺がどれだけ気を使ってると思っている!?いい大人が毎晩盛るな!」

オビトの長い台詞の内容にマダラ以外が静まり返った。口喧嘩を続ける二人にだけ時間が流れていて、周りにいる私達は言葉一つ発せられない。ようやく思考回路が繋がった頃に恐る恐るツバキ見てみれば顔を真っ赤にさせてフルフルと震えていた。

「・・・ツバキってば意外と大胆だな」
「いいじゃないか、昔からの想い人と念願の生活なんだ。少しくらい羽目を外しても罰は当たらないだろう」

ナルトと綱手様の突っ込みにツバキが更に顔を赤くさせる。珍しく目を見張ったまま動くことが出来ないツバキだが、暫くしたところで未だに口論を続けているマダラとオビトの下へ行くと二人の耳を思いっ切り引っ張った。

「いっ・・・おい、何をする」
「ツバキ・・・」
「二人とも人前でそんな話をしないで。恥ずかしくて外を歩けないわ」
「そうか。なら忍など止めてオビトも追い出して二人であの家に籠もろう」

反省の色を見せないマダラにツバキが頭を押さえて溜め息を吐いた。あのツバキが手に負えなくなるなんてマダラはある意味凄いわ。
そんな心境で感心半分にツバキとマダラを見ていたら、不意に今まで静かだったサスケ君が動き出した。ツバキの背に腕を回しているマダラを引きはがして真正面から睨み合う。相変わらずあの二人って仲悪いわよね・・・サスケ君はまだ諦めきれてない感じだし、マダラもツバキと仲が良かったサスケ君を警戒してるみたいだし。

「相変わらず邪魔をしてくれる・・・」
「場を弁えた発言も出来ないお前等はさっさと帰れ」
「貴様こそ俺のツバキに気安く触れるな。
 ツバキ、こっちへ来い」
「・・・マダラ、オビト。貴方達は先に帰っていて。今は恥ずかしくて顔を合わせられないわ・・・」

赤い顔はそのままでサスケ君の後ろから言ったツバキの言葉にマダラがショックを受けたように表情を崩す。うーん、狂気に歪んだところを見ているだけにこういった面を見ると意外過ぎるというか何というか。

「待てツバキ考え直せ。所詮オビトが勝手にのたまった事だろう。お前が気にすることじゃない」
「気にすることよ。夕食は稲荷寿司にしてあげるからお願いだから帰って」
「菓子に釣られる餓鬼と一緒にするな。いいからさっさと来い」
「嫌ったら。オビト、貴方の所為よ。責任を持ってこの人を連れていって」
「無茶言うな。チャクラを使えない状態で「ツバキの代わりがコイツなど不快なだけだ」言葉を被せるな!」

あぁ、また始まった。家でもこんな感じなのかしら・・・監視を兼ねているとはいえツバキも苦労するわ。
そういえば此処で立ち止まってもうかなり時間経つんだけど移動しないのかな。私達はともかく綱手様とシズネ先輩はまだ仕事とかあるだろうし。

「綱手様、これいつまで続くんでしょうか・・・」
「さぁな」
「でもあいつ等上手くやってるみたいで良かったってばよ」

口論をしているマダラ達とは反対に穏やかというかマイペースに傍観している私達。すると、とうとうマダラ達の言い争いが面倒になったらしいツバキがマダラに何か耳打ちをした。

「──珍しいな、お前が」
「もう、あまり調子に乗らないで」

何を言ったんだろう、マダラの表情が変わった。
恥ずかしそうに言ったツバキがそっぽを向いて歩き出す──否、歩き出したところを我に返ったマダラが引き寄せて深く口付けた。驚いたツバキの表情が見える。
どうしよう見てるこっちが恥ずかしい・・・!
それから何秒も経った頃ようやく離れた二人。ツバキはさっきと劣らないほど顔を赤くさせて体を震わせると、満足そうなマダラを思い切り殴り飛ばした。火事場の馬鹿力なのか綺麗な曲線を描いて飛んだマダラが、それでも上手く体を捻って地に着地する。

「このっ、この・・・!」
「そう怒るなツバキ」
「痴れ者!」

近付いてきたマダラを引っ叩いて踵を返したツバキ。ナルトがどこに行くか問えば「帰る」と答えが返ってきた。まぁあの羞恥に晒されたあとに何事もなく買い物をするというのは無理よね。
マダラがツバキの後に続いて、オビトも一言「迷惑をかけたな」と言い残すと二人を追っていく。

そして気付いたらツバキとマダラが手を繋いでいた。

「ツバキもマダラの事大好きだよなー」
「時代を超えて恋を成就させたんだもの。当然よ」
「それまでの過程で忍界大戦まで起きたがな」



何だかんだで
(三人の生活を楽しんでいるようです)
(一番の苦労人はツバキかオビトか)

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