創設期企画小説 | ナノ


終戦して各国の情勢が落ち着いてきた頃、商店街を歩いていたところでとある人物を見つけて足を止めた。
この時代から見ればかなり良い体格。顔にもかかる長い黒髪。一族特有の装束。
うちはマダラだ。

第四次忍界大戦の元凶にして俺の最初の生徒の一人であるツバキの夫となった男。そんな危ない忍を木ノ葉に置くにあたってマダラに科された制約の一つが『チャクラ・権力・富を持たないこと』である。
しかしいくら全てを失い身一つになったとてやはり彼に対する恐怖というのはそう簡単には拭えるものではなく、忍史上最強であり最凶であるマダラは周囲から腫れ物扱いされていた。

──と思われがちだが、忍ではない者には割と馴染んでいたりする。無論先入観はあったために里へ来た当初は近寄るものなど皆無だったが、ツバキとの仲睦まじい姿を見ているうちに戦争時のマダラを見ていない一般人は彼を『少し度の過ぎる愛妻家』と判断したらしい。
マダラが里内に現れても騒ぐことはなくなった。

まぁそれはいいとして。見なかったことにしても良いかな・・・。店先で装飾品を品定めしているみたいだけど話しかけたところで碌な事にはならないだろうし。
マダラをぼんやり見ながらそう考えていたら、目が合った。・・・目が合った。

「・・・・・」
「・・・・・」

沈黙が痛いとはこのことを言うのだろうか。マダラは考え込む仕草のまま、俺は『いちゃいちゃシリーズ』を開いたまま、固まっていた。数秒だか数十秒だか経った頃に先に動いたのはマダラの方で。

「はたけカカシか」
「・・・いつも俺の生徒がお世話になっています」
「・・・」
「あー・・・何か探しているんですか?」

あぁ、沈黙に耐え切れずに話を繋げてしまった。小さく「まぁな」と零したマダラが店の商品に目を戻す。話を聞くにツバキに似合いそうな品を見つけたそうだ。だがしかしこの店、結構値が張るようでそこら辺の商品とは桁が違う。
そしてマダラは働いておらずツバキのお金で生活している。つまり物を買うために使うのはツバキのお金だ。

「久しぶりにツバキに贈り物をしてやりたかったんだがな・・・買うにしてもあいつの金では意味がない」

うーん、避けていたから分からなかったけど本当にツバキ大好きなのね。でも流石にツバキのお金で買ってツバキに贈るというのは男として出来ないか。格好悪すぎる。

「別にお金のかかる物じゃなくても花とかでいいのでは?」
「花なら庭にいくらでも咲いている」
「料理とか・・・」
「出来ん」
「・・・」

ふんぞり返って言う事じゃないよね。面倒くさいなーこの人。もう行ってもいいか「あれ、カカシ先生じゃん」 あ、この声・・・。
振り向いたら第七班が揃ってそこにいた。マダラが駆け出してツバキを抱き締めればナルト達が小さく苦笑いを零す。

「ツバキ、今日はもう仕舞いか」
「えぇ、あとは綱手姫に任務の終了報告をするだけ。マダラはお買い物?」
「あぁ、まぁそんなところだ」
「買い物というよりツバキに贈りも──の˝!?」

最後まで言う前にマダラの膝蹴りが腹にめり込んだ。何このスピードとパワー。本当にチャクラ練ってないの?
俺が蹴り飛ばされたことにツバキ達の顔が驚いたものになり道行く人々は何事かと振り向く。ツバキがマダラに注意している間に体を起こすとナルト達が大丈夫かと声を掛けてくれて、それに頷けばホッとしたように胸を撫で下ろした。

「それにしても先生とマダラが一緒にいるとか珍しいってばよ」
「うんうん!先生ちょっと警戒してるみたいだったし・・・」
「ちょっとね、偶然会ってね」
「あの二人は相変わらずだな」

サスケの言葉に改めてツバキ達を振り向くと、なるべく距離を詰めようとしているマダラとそれを往なしながら道行く人に気にしないでと手を振るツバキがいる。
遠目に見ていた時は大変そうだったがあまり本気で嫌がっているわけではないらしく場が納まってくるとマダラの頬に軽く口付けていた。

「それじゃ先生、マダラ、わたくし達は綱手姫の所に行ってくるわ」
「うん、いってらっしゃ・・・あ、そういえば今病院にいるよ、五代目」
「そうなのか!? ちぇっ、せっかくこっちまで来たってのに」
「うるさいウスラトンカチ。ここからならそう変わらないだろ」

あー、機嫌悪いなサスケ。そういえばツバキの事が好きだったんだっけ。同じうちは一族とはいえ過去の人間に取られちゃ悔しいだろうなぁ。というか任務終了報告に行くのか、病院に。

喧嘩しているのをサクラとツバキが止めて、四人──とマダラは病院に向かって歩き出した。
あ、よかった。面倒事から解放された。

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