買ったばかりのパンツに足を通すと、仕事に向かった。
「デートはどうだった」
「相手の人は良かったんですけど。失敗でした」
これ以上聞かないで、とk・kを遠ざけてから、仕事を切り上げた。文句を言うつもりだったのに、顔を見たら面倒くさくなってしまったのだ。それからお昼を食べに外に出る。前は自分で作ることも多かったのだけれど、このところはどうもその気分にはなれなかった。お金なんてそう使う性質でもないし、お昼に外食するくらいどうってことはないと気がついたのはつい最近だ。奮発してヴィーガン専門の店に行ってみたり、屋台の蛍光色の物体を食べたりするのは案外楽しい。
このところ、皆と一緒にいるのが嫌だった。変わった私に優しくしてくれるのが、辛かったのかもしれない。一方的な拒絶だ。最低なのに、誰も咎めないのも嫌だった。
このまま仕事をサボってしまおうか、とも思う。別にあんなふうに、いつでも事務所にいなくたって構わないのだから。元来の真面目な気質の所為でそうしていただけで、あそこにあんなふうに、居続ける理由は無い。
「お姉さんボクを買わない?」
そんなお昼時間に声をかけてきたのは、一人の少年だった。レオと歳は変わらないかもしれないけれど、彼よりもずっと色気のある子。しかし服装がどうにも煤けていて、ぱっとはしなかった。
言葉の意味がわからないわけではない。それよりも自分が、こういった少年が声をかけても良いと思えるような“対象”に見えるのだと言うことに少しだけ驚いたし、面白かった。それに、自分が“変わった”ような気がして嬉しかったのかもしれない。
「こんな昼間からそういうの、捕まらないの?」
わたしの問いかけに、少年は笑った。
「ここの人たちは、結構見逃してくれるよ」
歪んでいるのかと思ったら、以外にも屈託のない笑顔だった。それにも私は嬉しくなる。
「いくら?」
思わずそう聞いていた。少年は指を三本立てる。わたしは財布から、迷うことなく三枚のお札を取り出した。
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