長編、企画 | ナノ

エピローグ


小さな商店街の行事とはいえ、ご近所中から人たちが観に来ているのか仮装行列は大盛況で。
その中でも力の入った烏野バレー部の百鬼夜行は大人気で、和風の雰囲気のままお菓子を配り歩けば、色々な人に写真を撮られる。
…一部小さな子供たちは泣いているようにも見えたが。


『うぅっ。』

その百鬼夜行の先頭を率いるのは、他でもない巫女さん姿の跳子で。

急遽スタート場所でもあり、集合場所でもあった神社で話を聞いた神主さんが巫女さんの衣装を貸してくれたのだ。
衣装と一緒に貸してもらえた幣を恥ずかしそうに顔の前で振りながら、跳子がもう一度唸る。
その後ろから烏天狗の澤村が笑いながら声をかけた。

「跳子。さっきから随分唸ってるけど、どうした?」
『どうしたも何も、恥ずかしいんです!』
「ハハッ。でもお前が一番普通、っていうか人間だぞ。」
『だからですよ!メイクとかお面でも誤魔化せないし、一人で顔が素なんですもんー。』

確かに後ろを歩く皆は妖怪っぽいメイクをしたりして、逆に吹っ切れているように見える。

「それでさっきから顔の前でバサバサしてんのか。堂々としてればいいだろう?」
『うー…!』
「こんなに妖怪を従えるなんて、安倍晴明か役小角みたいじゃないか。」
『うぅ。光栄ですけど、どっちも男性です…!』

肩で一つ息を吐いて、澤村が跳子の肩をバシッと叩く。

『ったー!』
「跳子、お前らしくないな。こういうのは楽しんだもん勝ち、だろ。」
『…っ!ですね!』

ニッと笑った澤村の笑顔につられるように、跳子もようやく彼女らしく笑う。
それを見た澤村が、大きく息を吸い込んで全員に聞こえるように言った。

「皆で一斉に行くぞ!せぇーのっ!!」

「「『"Trick or Treat"!!』」」

和風の妖怪軍団が、西洋のお祭り騒ぎのお決まりの台詞を叫ぶ。
そんなおかしなことだって、今日は許されちゃうような気がする。

何はともあれ、ハッピーハロウィン!


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