長編、企画 | ナノ

月島蛍



『月島ー、お待たせー!』
「……。」
『…月島、なんて顔してんのよ…。』

すでにこの流れからろくなもんじゃないと思っているのか、返事もせずに月島がただ顔を歪ませる。

『大丈夫だって!月島の仮装はめっちゃシンプルだから!』
「…シンプルって何ですか。」

しぶしぶと受け取った紙袋には、白い布地が見えた。


「ツッキー…、」

山口が何かを言おうとするのを、冷たい視線で月島が遮る。

月島の衣装は確かにシンプルだ。
真っ白い長い布地一枚。
頭の方には針金が入っているのか形をつけられている。
誰がどう見ても"一旦木綿"だ。

『ね、シンプルでしょ?空も飛べちゃうしカッコいいー!』
「……。」
「空飛べるのか…?!」
「くっ…!」
「…なんでちょっと羨ましそうなのさ。」

悔しそうな影山と日向にも送られる冷たい視線。
そんな月島の様子を見て、跳子がふぅとため息をつく。

『ダメ?やっぱり気に食わない?いや、本当はバンパイアとか似合いそうだとは思ったんだけど、どうしても和風でいきたくてさ…。』
「…。」
『嫌ならもう一つ"ねずみ男"も予備で持ってきてるけど…。リアリティー出すために臭いつきで…、』
「このままでいいです。」

月島の言葉に跳子が「よかった」と笑った。


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