四.それは願い下げ

一緒のベッドで寝ようと提案され努力すると言ったものの、直前で名前は怖じ気付いてしまい二人は膠着状態に陥っていた。

「やっぱりコレはセクシャルハラスメントだ!パワハラだ!」
「違いますよ。あなた私の部下じゃありませんし」

襟を掴んでいる名前の手を鬼灯はそっと握りこみ、ゆっくりと引き剥がす。

「そんなにお嫁さんが嫌なら……」

こっちにだってとっておきの言葉がある、と鬼灯の瞳は加虐に染まる。

「奴隷にしてさしあげましょうか?毎日ひれ伏しながら帰ってきた私を出迎えて、金棒で殴られながら嫌だ嫌だと喘いでよがっ」
「すみませんでした」
「では、お嫁さんということで」

鬼灯は手を離して、自分の体に倒れさせるように名前を抱きしめた。
身長差のせいもあるのか名前をやけに小さく感じた鬼灯は少し腕の力を緩めた。
名前はそれによって動きやすくなったため、身をよじって鬼灯を見上げた。

「これは」
「お嫁さんの務めです」
「なんじゃそりゃ」

腕の中で呆れられている。
密着しているせいで互いの心音が大きく聞こえる。
名前の脈は至って普通で、鬼灯は少しずつ速さを増す自分の心音に気付かれないように深呼吸をした。
そして、慌ただしかった地獄にもようやく夜が訪れる。

「あの、抱きしめながら寝ても良いですか?」
「調子乗らないで下さい、ホント」
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