着信100件、新着メール20件
薄い殻で自分を包んで閉じこもってるのは楽だった。でも唯一それをいつも容易く破って私を取り出そうとする人。

それが総悟だった

「げっ…」

まだ薄暗い明け方、バイブ音で目が覚めてしまって携帯を見ると総悟からだった。

「着信100件…!?」

しかも総悟と喧嘩して、そのまま不貞腐れて寝てしまった昨日の晩からの間にだ。
き、昨日寝てないのか。深夜二時にもかけてきてるし…新着メールもたくさん。

案の定全部総悟。

「こっわ!ええとナニナニ………」

“オイ電話出ろ”
“起きてんだろ電話出ろ。じゃねーと家乗り込むぞ”
“おい起きてんのか?”

  ・
  ・
  ・
  ・

“てめー出るまでかけつづけてやるからな”

20通目のそれを最後にメールはない。

『ガッコ、行く?』
『…やだ、皆やだ』
『あっそ。じゃあ仕方ねーから俺も今日はサボってやらァ』
『ごめん……』
『なんでおめーが謝るんでィ』

何度交わしたやり取りだろうか。
お互いの気持ちなんてずっと昔から分かってた、でもこの関係が心地よくて一番安心した。

私は総悟に甘えてた。

「!!」

突然携帯電話が鳴って驚いて落としそうになった。震える指で通話ボタンを押す。

「も…もしもし」
「あ、やっと出やがった。てめー今まで何してやがった」
「ね、寝てた…」
「…あとで覚えてろィ。んなことより窓開けろ、窓。」
「え…?」

とりあえずだけど近くにあったヘアピンで長い前髪をあげ、窓を開ける。

「!」
「おう」

そこには総悟がいた。家の前から私を見上げている。

「このとーり。俺はどこにも行かねェ。だから、信じろ」
「あ…」

不安になったの。
総悟はほんとは私のところに来るの面倒なんじゃないかって、こんな、殻に閉じこもってばかりの私なんて。

でもそんなのただの思い込みだった。

「総悟、今、そっち行く」

泣きながら私は、消え入りそうな声で彼へと告げた

title:31D

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