最後に黒板に書いたコト
卒業式も終わって、もう誰も来ない教室。
黙って鍵を借り、教室に入ってみんなの思い思いの感謝の言葉が書かれた黒板を眺めた。
白いチョークを手にとり、黒板に書き足す。
三年間ずっと伝えられなかったこと、ちゃんと見つけてくれますように。
私はそう願って、教室を出た。
「チクショーあいつら…ちょっとウルッと来ちまったじゃねーかコノヤロー」
ぶつぶつと独り言を呟きながら俺は校内を見回っていた。自分が担任を勤めた教室。ドアに手をかけるとすんなり開く。
「なんで開いて…?…うお、あいつら黒板ぐっちゃぐちゃじゃねーか!」
他人より真っ直ぐな心根のくせに行動も人に伝えるのも不器用な生徒達
そんなあいつらの真っ直ぐで不器用な言葉。
「消せねーじゃねェかオイ」
嬉しくもあって、切なくもなる。
黒板を指でなぞったらいろんな色のチョークで汚れてしまった。上から順番に書かれたメッセージを読む。
一番下まで来たとき、小さく控えめに書かれたそれを見て銀八は驚いた。
“先生、三年間ずっと好きでした。名前”
「…遅せーんだよ、バァカ」
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