君の体温は幸せの温度で、
まず最初に噌汁の良い匂いを感じ取った。
トントントントントン、何か刻む音。かすかに聞こえるふつふつと煮込む音。何コレ、アットホームだな。心地好いリズムが目を開ける前に俺を二度寝に引きずり込もうとする。再びうつらうつらと意識が曖昧になって、もう一回寝ようとしたら、パタパタと足音がどんどん近付いてきた。

「銀さん、起きて」

優しく身体を揺すられて、ようやく重い瞼が上がった。

「……名前?」
「おはよう。朝ごはん用意できたよ。ね、起きて」

………………ああなんて、幸せすぎる夢だ。こんな、名前と新婚みたいなことして…

「名前〜………」
「やだ、ちょっと、銀さん寝ぼけてる?」

抱きしめた名前はあったかくて、やわらかい。すごく安心する。

「でも夢なんだよな…」
「え?何言ってるの、脳みそもパーになったの?現実ですよこれは」
「え」

その言葉で一気に意識が覚醒した。布団から飛び起きて、ぷにぷにと名前のほっぺたを触った。ついでに自分のほっぺたもつねる。

「夢じゃない…」
「そーですよ、私達結婚したんですよ。銀さん昨日の披露宴飲み過ぎたんじゃないの?」
「あ…」

言われてみれば…おぼろげに、まだ靄が掛かっているようではあるが思い出してきた。
うん、結婚したわ、確かに馬鹿みてーに騒いだわ。

「…夢じゃねーのかァー…」

作りたての温かな朝ごはんも。家中にふんわりと漂うその香りも。音も。そして名前も。

「幸せだ……」

もっかい、確かめるように抱きしめる。
夢じゃなくて、よかった。

title:31D

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