呆れるくらいの愛を注いで

帰ったら拗ねた神獣がいた。膝を抱えてうさぎたちと一緒に雑草をブチブチ引き抜いている。
吉兆の印のくせに周りにどんより空気と拗ねている空気を撒き散らしているさまに一瞬「うぜぇ」とか思ってしまったが、何か理由があるのかもしれないと思って話しかけた。

「白澤、どうしたの?」
「どうしたもこうしたも……」

キッと私を睨んで指を突きつける。

「また鬼灯のところに行っただろ!」
「だって仕事相手じゃん」
「話したでしょ!?」
「話さなきゃ仕事になんないもん」
「浮気した!?」
「するわけないじゃん。白澤がいるのに」
「君可愛いタイプが好きだって言ってた!」
「そうだね。鬼灯もゴツイくせに小首傾げるわ甘党だわ辛いの食べれなかったりで可愛いとこあると思うわーアハハハー」

私はケラケラ笑っているので冗談で言っているのが見ても分かるが、白澤はそうでもないらしい。
少し離れた所で一部始終を見ている桃太郎くんは、いつもは女を弄ぶ中国の神獣が逆に弄ばれているのを見るのは中々痛快だと思っているけれど、同じ男として同情しているような表情にも見える。
ま、そろそろ少し可哀想だからフォローしてやるか。

「でも、白澤以上に可愛い人はいないかな」
「!!あとッ…」
「あと?」

あ、ヤバイ口元緩んできた。
アホ程生きてるくせに。こんな言葉でちょっと顔を赤くして俯くところとか。

「あと…あと…」
「………ぶはっ、あはははは!子供かよ!!あはは!」
「笑わないでよ!」
「ふふっ、ごめんね。愛してるよ、白澤。好き、大好き」

言った瞬間唇を奪われた。
顔が離れた時の彼の顔はもう真っ赤で。

「女たらしも丸くなったねえ。今までアレだったぶん初々しくなった」
「…たまには僕にも口説かせてよ」
「大丈夫だよ。白澤がしょっちゅう可愛いから、白澤が口説かなくても私離れていかないからね」
「………」

隣に座ったら、偶然手と手が触れ合った。一旦お互いに離れかけたと思ったらお互いから近寄って指が絡まる。
その熱い熱い手を私は幸せな気分でしっかりと握りしめた。

title:無殉

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