忍ぶ恋

白龍皇子が迷宮攻略へ向かった一方私は王宮に残った紅玉様とお留守番である。
紅玉様は傍から見て分かる程思い悩んでおり、それは所謂恋煩いだということは言わずもがなである。

「はあ、。」

夏黄文が所要で出払ってる間紅玉様の護衛を任された私は文官如きの身でありながら彼女の厚意により向かい合わせに座らされお茶まで頂いている。
恋する乙女の溜め息とは聞こえは良いが恋煩いほど厄介なものはないと思うのはやはり自分も今彼女と似たような境遇に置かれているからかもしれない。

「シンドバット王のことをお考えですか?」

「ば、馬鹿!違うわよ。」

「隠さなくても大丈夫です。紅玉様の配下の者は全員知ってるんで。」

紅玉様は林檎のように顔を真っ赤にさせて否定している。その姿だけ見れば身分も何も関係ない年頃の女の子に見える。

紅玉様は真っ赤な頬を押さえて俯くと小さな声で言いたいことはわかってるの。と呟いた。

「シンドバット様と私は一緒にはなれないわ。夏黄文は曲がりなりにも私のために頑張ってくれたけど、諦めようって何度も心の中で思ってたの。でもね、気がつくと目で追ってるのよ。」

馬鹿みたいよね。と眉を下げ笑う彼女の拳は膝の上で固く握られていて、私は一瞬かける言葉が見つからなかった。

「紅玉様、たとえ結ばれなくとも想い続けることは罪ではないと私は思いますよ。たとえ想いが届かなくても、叶わないと知っていても諦めることと想い続けることどちらも辛いなら、私は想い続けることを選びます。叶えることだけが恋の形ではないでしょう。」

「なまえにもそんな方がいるの?」

「はい。私なんかよりもずっと身分の高い高貴な方で。いつも意地が悪くてだらしなくてどうしようもない方ですけど時々底抜けに優しくて、あの方には本当に幸せになってほしいと願っております。」

「そう。じゃあ私たち仲間ね。」

顔を上げた紅玉様ははらはらと涙を流しながらも笑っていてとても可愛らしい十七の少女だった。

「ええ。仲間です。お互い頑張りましょう。」

「勿論よ。もう迷ったりしないわ。」

うふふ、と茶を飲みながら紅玉様が嬉しそうに笑うので私もつられて笑ってしまう。
遠くにいる私の主君であり大切な人、煌帝国、神官、この時ばかりは全て忘れて彼女と純粋に笑っていたかった。









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