初めは私のシンドリア行きを断固拒否していた紅明様だったが白龍様の鶴の一声により渋々シンドリア行きを了承してくれたので白龍様は本当に素晴らしい。
私、白龍様の側近になりたかったです。とべた褒めしたら顔を真っ赤にして否定されたのであの朴念仁の紅明と血が繋がっているとは到底思えなかった。
そんなこんなでシンドリアに到着して船から降りてみればざわざわと騒がしい全く状況が読めないのだが一体これはどういうことなのか?
船の旅を終えた紅玉様、白龍様とシンドリアの港へ降り立ったのだがどうやら妙な騒ぎが起きている。
話を聞いてみると、先日煌に訪問に来たシンドリアの王が紅玉様を慰みものにしたとか何とか。
「姫の様子がおかしかったのはそのせいだったんですね?しかし、いくら酒に酔っていたとしても一国の王様ともあろう方がそんな軽率な真似しますか?」
先日の謁見の件ではないが、それこそ両国の戦争の引き金になりかねないじゃないか。
「そ、そうだ!俺はそんな軽率な事はしないぞ!」
「しかしなまえ様、何故シンドバット王は姫の隣に寝ていたのでしょう?説明できますか?」
「それは、私にも分かりません。」
夏黄文殿はそう捲し立てるように続けるとシンドバット王に紅玉様と婚姻を結ぶように持ち掛けてきた。
困り果てたシンドバット王はシンドリアの八人将と呼ばれる方々の中の一人の女性に頼むと、彼女の水魔法によって全ての謎が溶けたのだった。
この騒動の結末を話すと全ては夏黄文の計略だったらしく、やはりシンドバット王は無実だったらしい。
白龍様に膝を折らせてしまったのは誠に申し訳無いことだ。
出過ぎた真似をした夏黄文には私からきついお仕置きを用意させてもらった。
何より可哀想なのは紅玉様本人なのだ。
とは言え、私は面白い魔法が見れたのでちょっと得した気分でもある。
シンドバット王は中々話の分かる方のようで白龍様から私がシンドリアの政治について学びたがっているとの旨をお伝えしてもらうと、すぐに政務官殿を寄越してくれた。
「先程は大変失礼致しました。なにぶん、彼も姫のことを思ってのことですので、」
「貴女が謝る必要はありませんよ。我々の王も日頃の行いが悪いので仕方がありません。私はジャーファルと申します。シンドリアの政務官を務めていますので何か分からないことがあったら遠慮無く私に聞いてください。」
「有難うございます、政務官殿。私はなまえと申します。煌帝国第二皇子練紅明様の側近兼専属文官です。」
政務官殿は王宮内を案内してくれるそうで、その間にシンドリアの貿易や行政についての特色を余すところ無く説明してくれた。
「此処について学びたいなら参考文献が黒秤塔に、それから白羊塔では私たち文官が仕事をしていますので
、もし見学したいのでしたら私に声をかけてください。」
「此所は女性の官吏の方も多いのですね。」
「ええ、女性の方が細やかな気遣いも行き届いておりますし、この国ではそのような差別は廃止されています。」
それはとても羨ましいと思った。
「そうですか、私の国でも表向きでは男女差別は無いようですがやはり宮中では男尊女卑が根強く残っています。」
「人は生まれる性別も、国も人種も選べませんから、儘ならないものです。」
政務官殿は瞳を伏せながら溜め息を吐くと長い睫毛が目の下に暗い影を落とした。
彼の過去にもそんな儘ならない事があったのだろうか。
ええ、本当に。と心の隙間に触れないように微笑みかけると彼はハッとしたように瞼を上げて嫌になっちゃいますよね。と笑った。
「ご丁寧にどうも有難うございます。本来でしたら私のような者にこのような丁重な扱いをする必要など無いのに、」
「そんなことは有りませんよ。今度は貴国についても教えてください。」
恭しく頭を下げて去っていく政務官殿を見送ると、自分に用意された部屋を見渡す。
ここまで豪勢な部屋を用意してもらえると思っていなかったので、私は気分上昇。
ふかふかの寝台で年甲斐もなくぴょんぴょん跳び跳ねていると部屋に訪ねてきた少年たちにとても怪訝な顔をされた、