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あれから名前はもう一試合やったあと、志賀のところで用事を済ませて三橋の家へ向かった。田島から教えてもらった近道を通り、急いで向かう。

「あ、ここね。えっとインターホンは…」

早速着いた名前はインターホンを押す。ドアが開くまでの間、走ってきたせいで乱れてしまった髪を、てぐしで直していたら、カラカラカラ…とゆっくりドアが開いた。

「い、いらっしゃい…」
「ごめんね、三橋君急に押し掛けて…。体調はどう?」
「へ、平気…」
「そっか…でもまだダルそうね…」

そう言って三橋のおでこにぴと、と手を置いた。それに驚いたのか、はたまた嬉しいのか、三橋は「うひっ」と声を漏らした。

「うん、やっぱりちょっと熱あるね…。明日までには復活するといいけど…」
「だ、大丈夫…だよ!と、とり…あえず…中に…」
「あ、うんそうだね!お邪魔します」

三橋に案内され、みんながいるリビングへと入った。そこのテーブルの上にはカレーやお弁当が並べられていて、お昼ご飯真っ最中といった感じだ。

「あ、名前!やっと来たー!」
「遅くなりましたー」

一番に気がついた田島が顔を上げる。それからみんなが徐々に名前の方を向いて、それぞれが声をかけた。

「そうだ三橋君。私今日渡すものがあって……あっ!!!!!!」
「うわっ、何…?」
「これ持ってきたのもしかして花井君…?」
「そ、そうだけど…?」

持ってきていた紙袋をごそごそと探る手を止め、いきなり声を上げた名前。その視線の先には高校野球ニュース。そう、実は名前も花井と同じ物を持ってきていたのだ。

「うー…せっかく持ってきたのに」
「え、や、何か…ごめん」

別に悪くもないのに謝ってしまった花井。まぁ、彼らしいといえば彼らしいが…。

「あ、いや…大丈夫、大丈夫だよ!DVD一枚ぐらい…ね!……これは持って帰るよ」

彼の態度に名前は慌ててフォローを入れる。そして出しかけていたDVDを紙袋に直して、阿部と花井の間に座った。
するとその時阿部は、名前が手に紙袋一つしか持っていないのに気がついた。

「…お前…昼飯は?」
「え、あー…今日持ってきてないんだ」
「はぁ?じゃあ今日どうするつもりだったんだよ」
「何か適当に買おうかと…」
「…思ってたけど、忘れてたわけだな」
「まぁ……」

あはは、と苦笑いをする。そんな名前に阿部はため息をついて席を立った。

「じゃあお前もカレーもらえば?俺も今からもらう」
「そっか!三橋君、ご馳走になってもいいかな…?」
「あ、う、うん…!」

三橋の了解をもらって名前も席を立ち、カレーをつぎに行った。



「そういや名字はさ、何で西浦来たんだ?」
「私?」

カレーを口に運びながら泉に目を向けた。逆に泉達は名前を見つめている。

「さっきさ、みんなで西浦に来た理由お互いに言ってたんだよ」
「理由か…」

はっきり言って、これと言った理由はない。名前はカレーを運ぶ手を止めて考えこんだ。

「まぁ、近いし…学校の雰囲気も良かったし…あ、グラウンドもちゃんと見たよ」
「なるほどな」
「それと、どうせなら隆也と一緒のとこ行ったほうがいいかなって思って」

「ま、普通そうだよな」

花井の言葉に泉も頷く。田島や三橋に比べて、なんてことはない理由だが、大体の人が似たような理由で学校を選んでいるため、共感できた。


「あ、そうだ三橋君、昨日ダウンもしないで帰ったけど大丈夫だった?」
「あ、それ俺も聞こうと思ってたんだよ」
「隆也メールで聞いたんじゃないの?」
「いや…返事がなかった」

「………」

阿部の言葉に名前は一瞬言葉を失った。口をぽかんと開けてジッと彼を見つめる。

「…んだよ」
「や、何か可哀想だなって…」
「言うな、その事はもう気にしないことにしたんだ。……だから、そんな目で見んなって!」

哀れみの目を向ける名前の頭を軽く叩き、阿部は三橋の元へ向かった。それと同時に田島も三橋のそばへ行き、小さくなってる三橋を見下ろす。

「阿部ってマッサージできねーの?ちっともんでやったらよくね?三橋体重いらしいよ」
「素人は筋肉触んなってシガポに言われたんだよな。今日シガポ、来れそうだったら……て、あ…」

ふと名前が目に止まり、言葉を切った。横にいる田島はどうしたのかと不思議な顔で2人を見る。


「素人じゃねぇ奴いたわ」

それだけ呟き、名前を呼ぶ。
そう、名前の父親はスポーツトレーニングのプロだ。しかも彼女の父親は勉強熱心で、トレーニング以外にもたくさんのことを学び、娘にも教えていた。だから勿論マッサージもできるというわけだ。

「私でいいの?」

遠慮がちに尋ねる名前の背を田島が押した。

「大丈夫だって!やれるだけやって、それでダメだったらシガポに頼めばいいじゃん!」
「…わかった」

名前は三橋にも一応了解をとり、マッサージ及びストレッチを開始した。

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