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それから、花井のセーフティーバントで阿部がホームへ帰り、逆転。とりあえず良かったと、名前が息を漏らすと田島が三橋を連れてベンチへ帰ってきた。

「わ、復活した。お帰りー」

そう言って、名前は三橋の元へ駆け寄った。周りも名前の声を聞き、三橋の存在に気づいたのか次々に声をかけていく。田島は「なっ?」と言って三橋の肩を叩く。そんな様子を微笑ましく見ていた名前に田島が近寄ってきた。

「田島君お疲れ」
「名前もお疲れー!」
「田島君格好よかったよ」
「ほんとに!?でも俺一点しか入れらんなかったしさ…悔しー!」

さっきの打席のことを褒めたら、田島が一瞬目を輝かせた。だがすぐに肩を落とし盛大にため息をつく。

「そんなことないよ。田島君はやっぱりすごい」

ニッと笑って田島を元気づけようと、名前は田島の手を握った。

「んーっ!!やっぱ名前可愛い!」
「なっ…ちょ、田島く…」

しかし元気が出すぎたのか田島は思い切り名前に抱きついた。さすがの名前もいきなりだったので動揺を隠せない。どうしようかと困っていると、救いの手が差しのべられた。

「田島ー、そのへんにしとけよ。じゃねーと阿部がキレるぞ」
「泉君…」

声の主は泉だった。
泉は田島の服を引っ張りズルズルと連れて行く。

「んもー、なんだよ泉!俺まだ名前と…」
「黙れ」
「はぁい…」

泉のオーラに負けて子犬のようにおとなしくなった田島を見て名前は少し可哀想だったかなと思ったが、自分の身の安心を考えるならこのくらいがちょうどいいのかもしれないと、名前は何も言わないことにしておいた。


九回の表
泉、ショートゴロ
水谷、サードゴロ
三橋、三振


次の回で最後だ。
二番の柊はファーストがとってアウト。続くショート吉もアウトをとった。
最後は四番、織田。
最初は全力投球で次はファール。そして次の球、三橋はおおきく振りかぶって、投げた。



すると織田は見事に空振り。
西浦の勝利となった。



















「…名前?何やってんだ?」
「しー…」

試合の後、無事合宿所に戻ってきたみんなはそれぞれの仕事をこなしていた。そんな時、自分の仕事を終わらせた阿部が三橋の横にしゃがみこんでいる名前の姿を見つけた。

「三橋、どうかしたのか」
「寝てる…」
「そうか…」

何かあったわけではないとわかり、阿部は安堵のため息をつく。

「ね、三橋君このまま寝かせといてもいいかな」
「おう」
「じゃあ風邪引かないように布団に寝かせてあげなくちゃ。隆也、布団敷いてあげて」


阿部が布団を敷いているうちに名前は三橋をゴロンと転がし、持ち上げる体制になった。あとは抱えるだけ。そう思った時に廊下側から花井の声が聞こえてきた。

「何やってんの?」
「三橋君が寝ちゃったから布団に寝かせてあげようと思って。今から持ち上げるとこ」
「あ、それなら俺代わるよ。どいてみ」

花井に言われて名前は黙って横に退け、三橋を花井と阿部に任せた。さすが男子。あっという間に持ち上がった。

「…起きないね、三橋君」
「すげー熟睡」

無事布団の上に寝っ転がった三橋に、名前はタオルケットをかけると暫く彼の様子を見る。側にいた花井と阿部も同じように覗き込んでいたが、途中で花井が監督に呼ばれて、再び二人きりとなった。

「…俺、今日の試合で三橋に対して気持ちが変わった…つもり。こいつにはそれがちゃんと伝わってんのかな」
「少なくとも信頼してくれてるようには感じるけど?すごく安心した寝顔してるもん」
「…ならいいんだけど」
「捕手が投手に尽くした分、投手は信頼で返すんだと思う。その第一歩として、今日はなかなかいい試合だったと思うよ。って、マネジが何言ってんだって感じだけど」
「いや、お前も勿論信頼してるし頼りにしてるけど」
「ふふ、じゃあその期待にちゃんと応えないとね」

夕日で赤く染まった部屋で、小さく笑みを零すと、二人はその部屋を後にした。




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