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「ただいまー」
「あ、名字。お前どこ行ってたんだよ、篠岡が探してたぞ」


三人でベンチへ戻ると花井がひょこっと顔を出した。

「え、ほんと?」

名前は篠岡の姿を探すため、キョロキョロと辺りを見回した。すると少し先に同じようにキョロキョロしている探し人を見つけた。名前は急いで篠岡の元へ駆け寄る。

「千代ちゃん…!」
「あ、名前ちゃん!探してたんだよ」
「何かあったの?」
「あのね、名前ちゃん、うぐいす嬢やらない?」
「はい?」


聞けば、三星には女子がいないため、篠岡が頼まれたらしい。でもそれをやれる自信がない篠岡は名前にやってもらいたいのだと言う。

「や、これは千代ちゃんがやるべきだよ。千代ちゃん声可愛いし、聞き取りやすいし、はまり役だって!」
「えー…でも…」
「大丈夫だって。ベンチは私に任せてよ」

ねっ、と笑って手を握ると篠岡は渋々頷いた。







「おー名字。篠岡、何だって?」

ベンチに戻れば、また花井が話かけてきた。名前は今日やるべきことを確認しながらこたえる。

「何かねー…うぐいす嬢やらないかって聞かれた」
「で?」
「千代ちゃんのほうが向いてるから千代ちゃんにお願いした」
「へぇー。別に俺、名字も向いてないとは思わねーけどな」
「そうかなー」

名前は小さく息を漏らし、ふとマウンドへと目を向けた。するとそこにはちょうどフォークを投げるらしい叶の姿が。


バシュッ…


「……すごい…」

みんな大丈夫かなと周りを見渡せば、若干一名、倒れかけている人物がいた。そんな三橋を阿部は腕で支える。


「大丈夫!な、田島。お前なら打てるだろ?」
「俺はどんな球でも打つよ!一試合やって打てなかった球ないもんねー」
「田島君かっこいー」

ここにいる全員が思ったであろう言葉を名前は口にした。すると、田島はニカッと笑って名前に近寄る。


「マジで!?じゃあさ、今日勝ったら俺も阿部みたいに名前って呼んでいい?」
「へっ…?」

さすがに予測してなかったことを言われ、名前は唖然とした。しかし田島は名前とは逆に目がキラキラと輝いていて、邪険にはし難い。

「あ、いや…別に今からでもいいよ?みんなも名字でも名前でも好きなように呼んでくれてかまわないし…」

田島の勢いに圧倒されながらも声を絞り出した。

「ホント!?じゃあ、これから名前って呼ぶ!そして阿部に飽きたらいつでも俺んトコに来ていいからな!」
「はい…?」

何を言っているんだろうかこの人は…本当、田島には驚かされてばっかりだ。
名前は暫く呆けていたが、後から段々田島が可愛く思えてクスっと笑ってしまった。




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