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 ▼入浴



段々寒さも本格的になってきたある日の夜、私達はお風呂に少し熱めのお湯を張って、一緒に入浴しようということになった。いつも烏の行水な隆也も、さすがにゆっくり浸かりたかったみたいで、お湯が溜まったと思ったら早速服を脱いでいってしまった。その後に続いて私も脱衣所に入り服に手をかける。すると、先に入った筈の隆也が慌てた様子でこちらへ戻って来た。

「…どうしたの?」
「湯が、白い…」
「え、そうだけど?」

脱ぎかけの服を下ろし、首を傾げる。しかし隆也は目を見開いて固まっているだけで、一向に話が進まない。
要するにあれだ。彼は「入浴剤」に驚いているのだ。

「…入浴剤入れたんだけど、ダメだった?」
「入浴剤って…あんなに白くなるもんなのか…?」
「色々あるよ。緑っぽくなったり青っぽくなったり」
「青って…」
「そう言えば隆也ん家って入浴剤入れないよね。もしかして入浴剤入りのお風呂初めて?」
「当たりめーだ」
「そっか。入浴剤って結構あったまるよ」
「そうなのか…まぁ、とにかく先に洗ってんぞ」
「うん」

そう返事をして、私も準備を終わらせる。そして風呂場の扉を開けると、隆也が丁度体を洗い終えようとしているところだった。相変わらず洗うのが速い…が、いい感じに入れ替われるのでまぁ良しとする。
若干訝しげにお風呂に足を入れる隆也だけど、肩まで浸かってしまえばそう気にならないようで、気持ち良さそうに体を温めていた。

「どう?」
「どうっつってもな…浸かった感じ特に何も…匂いがするだけだ」
「まぁ確かにね。でも色々効果があったりするんだよ。湯冷めし難かったり」
「へぇ」

白いお湯を手で掬いながら相槌をうつ隆也を横目に、私も頭を洗って、体を洗う為のタオルを膝の上に乗せた。

「…それ、新しいやつか?」
「これ?うん、そう香りが違うの」

それ、とは私が今手にしているボディソープの事で、いつもと入れ物のデザインが違うので気になったらしい。前使っていた物が無くなって、また同じのを買おうか迷ったが、折角なら色々試してみようと買ったのが、今回の香りだ。

「…なんてやつ?」
「シトロンバジル。嗅いでみる?」

蓋を開けて、隆也の顔の近くにそれを持っていくと、稍あって彼は難しい顔をした。

「……お前の匂いじゃねぇ…いや、合わないとかそんなんじゃねぇけど…まだしっくりこねぇ」
「あははっ、だって昨日使い始めたばっかりだもん。前の方が良かった?」
「んにゃ、俺こっちのも好きだな」
「それは良かった」

そう言ってボトルから出る液体をタオルに垂らし、泡立てるとたちまち辺りにふわりと甘い香りが広がった。前回のボディソープと違って、甘過ぎないスッキリとした香りが含まれるのが特徴のシトロンバジル。私的にも悪くない香りだと思った。

「隆也も今度使ってみる?」
「あー……遠慮しとく」
「ふふ、だよねぇ」
「俺からお前の匂いがしてたら妙な感じだろ」
「それもそうだね」
「俺はお前からシャンプーとか石鹸の匂いがする…っつーか…嗅ぐのが好きなんだよ」
「…言い方やらしいなー」
「ほっとけ」

隆也はふぁ、と一つ欠伸をすると「早くお前も入れよ、俺のぼせそう」と私の入るスペースを空けてくれた。私はシャワーで体の泡を落とすと、その空いたスペースに体を収める。入浴剤によってより滑らかになったお湯に全身を包まれて、一気に体の疲れが取れたようだった。隆也が眠くなるのもわかる。
私達は暫くそうやって体を暖めていたが、さすがにそろそろ出ないと体がふやけそうだ、ということで、名残惜しいが湯船から上がり、お風呂場を後にした。


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