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「#エロ」のBL小説を読む
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 ▼二人の見解

「手?」
「そう手。もしくは腕。俺お前らが繋いでるとこも組んでるとこも見たことねぇぞ」


昼休み、ご飯を食べながら花井君が唐突に「手は繋がないのか」と聞いてきた。

「だって皆の前でしたことないもんねぇ。というか外であんまりしないよね」
「ああ」
「だから、やんねーのかって聞いてんだよ」
「なんで」

隆也お得意の「なんで」攻撃。だけどそんなことでは挫けない花井君は益々興味を持ってきた。

「なんでってお前なぁ…普通そういうのしたいんじゃねーの?俺彼女いたことねーからわかんねぇけど」
「知らねーよ。こいつに聞け」
「私だってわかんないよ。なんて言うか…色んな人に見られてまでベタベタしたいとは思わない…や、絶対とは言い切れないけど」
「だよな。俺もその時の気分に任せてる」

その言葉に妙に納得したような表情を見せた花井君。確かに、普段の私達から考えて「気分に任せる」というのは一番妥当な答えかもしれない。


そんなこんなで、放課後になった。今日は随分と雨が降っていてグラウンドが使用不可能なので、室内である程度の基礎練を行い、早めに切り上げて皆で電車に乗ってバッティングセンターに向かうことになった。

「あ、隆也」
「何」
「見て、あれ」

電車の吊革に(私は背伸びが辛いので近くの手すりに)捕まっていると、ふと目の前にやたらと至近距離でいる高校生カップルが目に止まった。普段はそこまで気にならないのに、これも昼休みに花井君があんなことを言ってきたせいだと思う。

「うわ…近っ。何やってんだアレ」
「わかんない…えっ…あ、わ、ちょ、ちゅー?ちゅーしてるちゅー」
「よくこんな公衆の面前で出来んな…隠れてしろよ」
「何見てんの?」

私達がコソコソ話をしていたら、またまた花井君が現れた。横にスッと立って、身を屈めて私と視線を合わせる花井君に、先程眺めていたカップルを指差す。すると花井君もさすがに驚いたようで、若干引き笑いで「おお…」と呟いた。

「お前らもあのくらいやってみれば?」
「めちゃくちゃハードル高ェじゃねーか。ちょっと道外れたとことかだったらまだしも、電車とか…注目の的だぞ」
「私も無理…もし隆也があんなことしてきたら嫌いになりそう隆也のこと」
「しねーから安心しろ」
「じゃああれは?」

と言って花井君が別の場所も指差した。そっちに目を向けると、そこには座席に座っているカップルがいた。二人の様子を詳しく説明すると、一つのイヤホンをお互いに片耳に付けて、何かの動画を見ているようだった。まぁ、そこまではまだいい。問題は彼氏の携帯を持っている手と反対の手、つまり彼女側の手だ。その手は制服のスカートから覗く彼女の膝を執拗に撫で回していた。

「え、アレ何やってるの?痴漢?」
「あれじゃただの変態じゃねーか」
「はは、あれもダメか」
「ダメも何もこんなとこでするようなことじゃねーだろ」

そう隆也が答えた時、電車のドアが開いて大量の学生とサラリーマンが入ってきた。確かに今の時間はちょうど帰宅時間と重なる為、このラッシュも頷ける。しかし問題点が一つ。押し寄せてきた人の波に花井君諸共三人が巻き込まれてしまい、元いた場所から随分と中の方へ押しやられてしまった。

「…随分押しやられたな」
「おい、お前掴まるとこあるか」
「ない…」

そう、真ん中付近は手すりも無ければ私が届く高さの吊革がない。あるのは人の頭にぶつからないよう、すごく高い位置に作られた吊革のみ。私が届く筈もない。
案の定花井君は余裕でそれを掴んでいるし、隆也も問題ない程度には届くみたいだ。

「まぁ、人いっぱいいるし…掴まらなくても大丈……ぶっ!?」
「おわっ!」

突然の大きな揺れ。おそらく駅に停まる際にちょっとした急ブレーキをかけたのだろう。

「びっくりした…ごめん隆也」

私はあまりにも急なことに対応しきれず、思いっきり隆也にダイブしてしまった。そんな私をいきなりだったにもかかわらず、隆也は逆の腕で支えてくれていた。

「ったく…あぶねーから俺の腕にでも掴まっとけ」
「はーい」

言われた通り、組むとまではいかないものの、安定するようにしっかりと掴まった。

「ははっ」
「どうしたの花井君」
「いや、お前らの基準がなんとなくわかったような気がして」
「?」
「でもそっちがお前ららしいわ」

いまだにクツクツと笑う花井君を、私と隆也は不思議そうな顔をしてしばらく眺めていた。

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