独占欲(1/9)



――放課後。

校内の見回りを終え、生徒会室へ戻る。

すると、生徒会室から聞こえてきたのは――…。


「あはは!那智君、くすぐったいよ〜!」

「真奈美せんせいの髪ってホント気持ちいいよな〜。」


――独占欲というのは、こういう事を言うのか……?

今、真奈美が那智に触られてるのを見て、酷くイラついている――…。







声を掛けず、黙って2人を見ていると、

那智は僕に気付いたようで。


「あっ、慧。いたんだ。」

「あっ…ああ。」

「慧君、お邪魔してます!」

「あっ…ああ。」


――何でお前達はそんなに普通なんだ……!


那智はまだいい。

僕達が恋人同士だと知らないから……。


問題は真奈美だ。

僕という恋人がいながら、那智にベタベタ触られて……。


「慧君……?」


僕の様子がおかしいことに気付いて、上目遣い気味に真奈美は僕を見る。


――反則だ。

そんな可愛らしい顔で見られたら、怒るに怒れないだろ……。


「真奈美…いや!北森先生がどうして生徒会室へ?」

「兄さん〜。そんなに真奈美せんせいを下の名前で呼びたかったら、呼べばいいのに。」

「なっ……!」

「ね〜、真奈美せんせい?」


これが、そうなのか……。

この間、嶺に教わった略語――…。


KY
空気読めない


お願いだ、那智……

空気を読んでくれ……。




次へ

戻る

×
- ナノ -