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恋は人を幸せにし、また、誰かを傷付ける。
どんなに相手を想っていても、相手が別の誰かを選んでしまったら、そこでその者の恋は幕を閉じる。
そして、そこでまた人生の分岐点が現れる。
今までの恋を引きずり、一歩も前に進む事なく終えるか、それとも、新たに気持ちを切り替えて前を向くか――
美紗はまさに、その中に立っていた。
幼い頃から想い続けていた相手。
しかし、彼は美紗の想いに気付く事もなく他の女性を選び、永遠の愛を誓い合った。
表面上では祝福を述べていた美紗であったが、心の中は張り裂けんばかりの苦しみと哀しみに満ち溢れていた。
彼の隣で幸せな笑顔を振り撒く彼女。
もし、あれが自分だったら――と、美紗はひっそりと虚しい幻想を抱いた。
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