それが無理でも……

…いいえ。
もう、無理なのかもしれない。



でも、大丈夫。
次に父さんと母さんと話すまでは。
マルタンさんと会うまでは。
その先の一日、一日を。
私は──…

生きて、居たい。



「ふふ。マルタンさんに会うまでに…色々、準備しておかなくちゃ」



柔らかく囁かれた一言とともに、ジャクリーヌは眠りへと落ちていく。



* * *



穏やかな日の光が注がれた寝室で小さく寝息をたてている娘を眺めて、パスカルはそっと微笑んだ。

「今日もいい天気だね、ジャクリーヌ」

温かな指先が、汗の乾いた娘の額から髪を梳くように、ふわりと伝い流れる。



空は、優しすぎるほどに蒼かった。





─fin─


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