「───っ!!」

激痛で、目を覚ます。

這い回る痛みから逃れるように身をよじって、視線だけを遠くへ遠くへと移して、ただひたすらに、時間の経過を待った。

小刻みになる呼吸を抑えるよう、できうる限りゆっくりと息をする。
吸って…吐いて、また吸って…

…そう。
焦ったところで、この痛みが治まることが無いことは、もう、解っていた。

解ってはいるのだ。
解ってはいるのだけれど。
それでも、呼吸を整えるのは…常に、酷く困難なままだ。



───怖い。

こわいこわいこわい。

頭の中が恐怖で埋め尽くされて、力の入らない両手で、シーツを握りしめた。



「………」

声は、出したくない。

父も母も、先ほどようやく寝付いたばかりだ。

両親の体が日に日にやせ細っていくのは端から見ても明白で。
目許の隈から窺える苦労と苦悩は、計り知れない。

なのに二人は笑うのだ。
毎日毎日、にっこりと。
果てしない優しさを帯びた瞳で。



"たすけて"と。
…叫んで、しまいそうになる。

でも、叫んでどうなるというの?
父と母を困らせてしまうだけ。
私の看病で疲れてもなお微笑んでくれる両親を、私はこれ以上、困らせようというの?



───…できない。

そんなこと、できない。

だって私も、父さんと母さんに笑って欲しいもの。
できることなら…隈のない目で。



ああ。
だけれど──…

怖い。

どうしようもなく怖い。
ぞっとする。



…今、もし「痛い」と叫んだら…?

ううん、だめだわ。
それは駄目。

この人たちはきっと、酷い眠気や疲れすら遮断してまで、一晩中、私の介抱に明け暮れてしまう…。



気を抜いたら駄目。
気を抜くと、叫んでしまう。

怖いよ。
怖い。

でも、叫んだら、絶対にだめ──…



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