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リューナートの傍にいる時、よくミアリは小さな指先を器用に動かして、何かを作っている。
クレイが言うには、昔からの趣味らしい。
反射的に受け取ったその青いビーズは、リューナートの掌の上で、緩やかに煌めく。
地上に降り注ぐ、星の光を受け取ったかのように。
「これは偽物の星つぶて。…本物はきっともっと美しい」
あの昴みたいに、と少女が南の空を指す。
キレイね、と丁寧に笑った。
そうして、もう一度、星を眺める。
六連星。
アルデバランの奥に瞬く星団。
あのようなに鮮やかな煌めきを、己の手の内に出来るとは思わない。
…思えない。
リューナートは、昴からそっと目をそらす。
けれど、似たものであれば、きっと掴めるのだろうか。
それを何よりも尊いと思えるかは、まだ分からないが。
己の内にある、小さな決意を(これは、祓魔師として生れついた、業か)。
握りしめるように、掌の星屑を抱え込む。
せめて、この淡い光に何かが宿れば、己の居場所も見つかるだろうか。
ああ…、行かなければ。
呼ばれているのかもしれない。
星とは異なるものに。
それは父である者の影かもしれないし、己自身の声なのかもしれない。
けれど、…もしかしたら。
血と砂塵の間から、星の欠片を選びとることができるのかもしれない、と。
リューナートは静かに思う。
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