色々あったが、どうにか無事に式当日を迎えられた。
 とは言え、当日の方がかえってバタバタしてしまったのだが。
 式は厳かな雰囲気の中、着々と進められた。
 チャペルでの挙式だったが、私達は人前式を希望したため、神父さんもいなければ讃美歌も流れない。
 でも、宗教的な儀式が苦手な私達には、そういった気楽なスタイルがかえって良かった。
 ただ、人前式でも誓いの口付けがあったのは予想外だった。
 人前でキスなんて曝し者にでもされた気分で恥ずかしかったが、結局は腹を決めた。
 ここには私と慎也以外には誰もいない。
 そう言い聞かせながら瞳を閉じ、慎也のキスを受けたが、絶え間なく光るカメラのフラッシュと携帯電話のシャッター音が、見事に現実に引き戻してくれた。

 結婚式と披露宴が終わり、その後は二次会、三次会と次々に引っ張られ、ようやく解放されたのは日付が変わった午前一時過ぎだった。
「やっと落ち着ける……」
 ホテルに戻るなり、慎也はベッドの上に大の字になった。
 私もまた、久々に量を飲んだからか、身体がフワフワと浮いているような感覚を覚えた。
「みんな、真っ直ぐ帰ったのかな?」
 ベッドの端に座りながら訊ねると、慎也は「さあなあ」とこちらに身体を向けた。
「葉月の方はともかく、俺のは見事に酒豪ばっかりだからな。もしかしたら、まだまだ飲み足りないとか言って、どっかの家にでも転がり込んでんじゃないか?」
「――まさか……、朝まで飲み明かす、とか?」
「あり得るな」
 慎也は苦笑いしながら身体を起こした。
「連中の事はどうでもいい。それよりこっちだ」
 私は慎也に強引に引き寄せられた。
 予想もしてなかった行動に見事にバランスを崩し、私が慎也を押し倒ているような格好になってしまった。
「お! いい眺め」
 仰向けになっている慎也は、私と目が合うなり、満面の笑みを浮かべた。
「ちょっ……! これは……」
 私は身体を起こそうとしたが、慎也の両腕によって完全に拘束されてしまった。
「逃げようったて無駄だぞ」
 慎也はニヤリと口角を上げると、そのまま身を転がし、先ほどとは逆の姿勢になった。
 つまり、私が慎也を見上げている状態だ。
「夜はまだまだ長い。今まで奴らに縛られていた分、二人っきりの時間を楽しまないとな」
「た、楽しむって……」
「嫌か?」
 私は少し間を置いてから、「――ヤじゃない……」と答えた。
「素直で結構」
 慎也は熱っぽい眼差しを私に向けると、ゆっくりと口付けを落とした。
 それは次第に深さを増してゆき、たくさん呷ったアルコールも手伝ってか、頭の芯まで溶けてしまいそうな感じがした。
「葉月」
 唇を離し、慎也は囁くように訊ねてきた。
「これからも、俺の側にいてくれるか?」
 答えるまでもない、と私は微苦笑を浮かべた。
 でも、言葉にしないと伝わらないことだってたくさんある。
 そう思い、私は慎也の頬に触れながら口にした。
「私は、あなたを愛します。どんな事があっても、ずっと……」



【あなたを愛します-了】


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