ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ







「おはようございます。」

「おはようございます。
ウィリアムさん、昨夜はよく眠れましたか?」

「はい、おかげさまでぐっすりと。
本当にありがとうございました。」

「すぐに朝食の準備をしますから、お待ちになってくださいね。」



この村には、宿屋がありません。
ですから、旅人は、昨夜、村長のお家に泊めてもらいました。
村長の家が、この村では一番大きいからです。



「街道はもうずいぶん補修されたんですか?」

朝食の席で、村長は旅人に訊ねました。



「ええ。大きな街道はもうずいぶん補修されて通れるようになりましたよ。
あとしばらくすれば、このあたりへ続く細い道も通れるようになるはずですよ。」

「……しばらくとは、あとどのくらいですか?」

「そうですね。
やはり、ここみたいな山間の道は後回しになるかもしれませんが、それでも、あと一年もすれば…
そうだ!僕、町に戻ったらここのことを話します。
そして、少しでも早くここに繋がる道を……」

「いえ…ここは最後で良いのです。」

「……え?」

旅人は不思議そうな顔をして、村長をみつめました。



「わしらは、今の暮らしに特に困ったこともありませんし、ここには元々訪ねる人も少なかった。
ですから、最後で良いのです。
そういえば、あなたはなぜこの村に?
ここに来るには相当に骨が折れたと昨夜おっしゃってましたが、なぜそんなに苦労してまでここに来られたのですか?」

村長のその質問に、食卓にいた皆の視線が旅人に集まりました。


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