ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ



「だが、勝負はもうついた。
この男は、岩をどけることは出来んかったじゃないか。」

「肝は二つなんだから、こっちにもチャンスを二度いただこう。
次はこのアルルが挑戦する。」

「なに?そのエルフが挑戦するじゃと?」

サンドラは、アルルをあらためてじっくりと眺める。



「よし、わかった。それで気が済むのならわしはそれで構わんぞ。
ただし、三度目はないから、そのつもりでな。」

サンドラは不意に姿を消し、酒瓶を十本入れたバスケットを持って、再び現れた。



「アルル…良いか?うまくやればあの酒はあんたのもんだ。
あのものすごくうまい酒がだぞ…
あれを逃したら、金がないから当分酒なんて飲めないぞ。
いや、金があった所であんな酒は滅多に手に入らないんじゃないか?」

アルルの耳元で、カルフはまるで呪文のように銘酒のことを甘美に吹きこむ。



「さ…酒……昨夜のうまい酒……」

アルルの目が夢見がちに潤み、頬はほのかに上気した。



「そうだ、あの酒だ!」

「よし、わかった。
私は絶対にあれをものにするよ!
……はぁぁぁぁぁ…ギーガーメティーーースーーーーー!」

アルルの気合いのこもった声が高らかに響き渡り、それと同時に雷鳴のような激しい音が耳をつんざき、地面は立っていられない程にぐらぐらと揺れた。



「あ……!」

立ち昇る土埃をかき消すように温かいものが五人の上に降り注ぐ。



「こ、これは温泉…!?」

アルルの呪文は巨岩を粉々に崩しただけではなく、その周りを広く陥没させ、温泉までをも噴き出させたのだった。



「サンドラさん、良かったじゃないですか。
岩はなくなったし、温泉が噴き出した。
この温泉に漬かれば腰痛もよくなるかもしれませんよ。」

「そ、そ、そうじゃな。」

サンドラは、温泉にびしょ濡れになりながら穴の中をのぞきこみ、小刻みに頷いた。



「それにしても、おまえさん…どあつかましいが魔法の腕はたいしたもんじゃ。
……どうじゃ、わしの弟子にならんか?
魔法をたくさん教えてやるぞ。」

「あいにくだけど、私は勉強は苦手でね。
じゃあ、ばあさん、酒はいただいていくよ。」

「残念だねぇ…」

サンドラは名残惜しそうな目でアルルをみつめた。







四人は、サンドラの魔法により、森の外に送り出された。
アルルは、手に入れた酒のおかげですっかり舞いあがり、クラウドは自分の無力さに打ちひしがれ、カルフとヴェリエルの間には気まずい亀裂が走った。



「良かった、良かった。
あの森に行ったおかげでこんなうまい酒が手に入った!
何が幸いするかわからないもんだねぇ!」

スキップで先頭を進むアルルの後ろ姿をみつめながら、三人は同時に深い溜め息を吐いた。


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