ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
魔女の住む森1






「どうやらまいたようだね。」

アルルは後ろを振り返り、追っ手がいない事を確かめ、満足したようににやりと笑う。



「ですが…なにやら不気味な森ですね。
……まさか、魔物等いないでしょうね。」

心配そうな素振りであたりを見回すクラウドに、カルフの不安もかきたてられた。



「クラウドさん、おかしなこと言わないで下さいよ。
このあたりに魔物なんて…」

カルフがそう言った瞬間、近くの茂みが動き、小さな物音が聞こえた。
反射的にカルフはクラウドの後ろに身を潜める。
四人の見守る中、顔を出したのはいたちに似た小動物で、そいつは四人の顔を見るなり慌てて逃げ出して行った。



「すごい魔物だったね!」

アルルの皮肉をこめた視線と言葉がカルフにぐさりと突き刺さる。



「ほ…ほらな、ここには魔物なんていないって言っただろ。
と…とにかくだな…どこか、休める場所を探そう。
さぁ、行くぞ!」

野菜の重さに押し潰されそうになった背中を伸ばし、カルフは無理に声を張り片手を高く上げた。








「おかしい……」

「やっぱり、アルル様もそう思われますか?」

「思うに決まってんだろ。
あれから何時間歩いてると思うんだい。
あれを見なよ。」

アルルが顎先で指し示した先には、魂の抜け殻のような目をしたカルフが、ずりずりと地面をはいずっていた。



「カ、カイン様…」

ヴェリエルは、憐れみのこもった視線でカルフをみつめた。




「カインはあまりにも疲れすぎて亀になってしまった…
それほど私達は歩き回ってるんだ。
だけど、どこまで行っても休めるような場所はない…
それもその筈…私達はさっきから同じ場所をぐるぐる回ってる…そうは思わないかい?」

「カ……カルフ……だ……」



最後の力を振り絞り、頑なに名前の訂正をして、そのままカルフは意識を失った。


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