ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
14


「キャロル、疲れてないか?だが、あと少しだからな。」

「私、疲れてなんかないわ!
外に出られるのなら一日中、いえ、三日だって一週間だって、私、歩き続けられる!
あぁ、私が戻ったら、お父様やお母様、そしてお兄様がどれほど喜んでくださるかしら…
あれからもう一年と少し経ってるのよね。
皆、私のことをもう死んでしまったと思ってるかしら?
それとも、諦めずにまだ探し続けていてくれるかしら?
ねぇ、ギディオン!」

「キャロル、すまないが、ここで少し待ってておくれ。」

興奮気味に話すキャロラインに、ギディオンの穏やかな声がかけられた。



「ギディオン、どこへ行くの?」

「……すぐに戻る。」

それだけ言うと、ギディオンはキャロラインをそっと抱き締め、どこかへ向かって歩き出した。







「では、ディラン。
後のことは頼んだぞ。
おまえは、私がこの森を出て行ったことをライアンに知らせるだけで良い。
後のことは問題のないようにすべてうまくやってあるからな。」

「ギディオンさん、本当に良いの!?
そんなことをしたら、あなたはきっともうここへ戻って来ることは出来ない。
それに…ここを長く離れたらあなたは一生魔物の姿で過ごす事になるんだよ!」

ギディオンは頷き、ディランの肩を優しく叩いた。



「ディラン…すべては覚悟の上だ。
皆に迷惑をかけたことをおまえからもようく謝っておいておくれ。」

「だけど、ギディオンさん……」

「ディラン…私は……どうしても彼女を幸せにしてやりたいんだ。
自分の使命を投げ出し、仲間を裏切るような真似をしても…それでも彼女をここに置いておくことが出来ない。
どうしても、彼女を人間の世界に戻してやりたいんだ。
……キャロルを……愛している……」

ディランはギディオンの固い覚悟を感じ取り、涙を流し頷いた。







「待たせたな、キャロル。さぁ、これを飲むんだ。」

「何なの、これ?」

「ここを出る時に一時的に酷い眩暈が起きると思う。
それを押さえるためのものだ。」

「そのくらい平気なのに…ありがとう、ギディオン。」

キャロルは手渡された黒い丸薬を口の中に放りこんだ。



「では、今から呪文の詠唱を始める。
おまえはただ私の身体に掴まっていれば良いからな。」

「これで外へ出られるのね。
ギディオン、私、幸せよ!」

「私もだ…キャロライン、愛している……一生、おまえの傍にいるからな。」

キャロラインを強く抱き締め、彼女の唇に自分の唇を重ねたギディオンの瞳から一筋の涙が零れ落ちた。


- 200 -

しおりを挟む
コメントする(0)

[*前] | [次#]

お礼企画トップ 章トップ

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -