ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ



「た、大変でございます!
ひ、姫様が!
キャロライン姫様がまた!」

慌しく部屋の中に飛び込んで来たのは、痩せた白髪の男だった。



「バーナード、落ちつけ。
そんなに興奮しては身体に悪いぞ。」

膝の上に手を置いて、大きく肩を動かしながら息を整える老執事に、国王は優しく声をかけた。



「ラッセル様、なにを悠長なことを…!
姫様がまた……」

「また城を抜け出しおったか…」

老執事の興奮をよそに、国王は、大きな窓から広がる広大な景色にゆっくりと目をやる。



「そ、そ、その通りでございます!
し、し、しかも……」

「衛兵をぶちのめして行きおったか…」

窓の景色から目を離さず、国王は落ちついた声でまるで独り言のように呟く。




「は…はい……」

「もう少し訓練が必要なようだな…」

「………はい。
そのように申し付けます。」

老執事は、国王の背中に向かって恭しく頭を下げ、気落ちした態で部屋を後にした。




「あなた…バーナードをいじめては可哀想ですわ。
それに、キャロラインを放っておいて大丈夫なんですか?」

長いドレスの裾を優雅にさばきながら国王の傍に歩み寄った王妃が、穏やかな声で囁いた。



「あの子はこの国の衛兵よりも強いのだぞ。
それに、ベルガーも一緒なのだろう?
ならば、どんな者であろうと適う者はおるまい。」

「そんな…あなた…
……そういえば、学者達はまだ誰もドラゴンの生態について詳しいことをわからないのですか?」

「あぁ…ドラゴンはもうずいぶんと昔に滅んだものだからな。
皆、それぞれに信じるものはあるようだが、どれもまだ推測の域を出ないようだ。」

「あれから、かれこれ一年になりますわね。
ベルガーが急に大きくなったり、強暴になったりすることはないのかしら?」

「さぁな…しかし、あのベルガーならどんなことがあっても、キャロラインを悲しませるようなことはしないと思うがな。
……おまえはそうは思わんか?」

国王の視線に、王妃はどこか困ったような笑みを返した。



「……そうですわね。私もそう思いますわ。」


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