「ゆかりさん…大丈夫?」

「なにがだ?」

「何がって…その……」

「ゆかりさん、慎太郎さんは、ゆかりさんの気持ちを心配してるんだよ。
当時のことを思い出したりいろいろあるんじゃない?」

部屋に戻った俺達は、部屋で他愛ない話をしていた。



「そりゃあ、な。
ここはあの頃とほとんど変わってないんだ。
だから、やっぱり、いろんなことが思い出される。
懐かしい思い出も…辛い思い出もな。
でも、だからといって、沈んでるわけじゃないから心配しないでくれ。
あ、ここは、下っ端の弟子の部屋だった。」

「そっか、そうだよな…」

ゆかりさんは気丈な人だから、そんなことを言ったけど、きっとけっこう気持ちはざわめいてると思うんだ。



「それにしてもなんだかびっくりしたよね。
陰陽師の体験コースがあるなんて…
結局、ここでは特に陰陽師なんて必要じゃないから、経済的にも大変なのかもしれないね。
金兵衛さんのサイドビジネスみたいなもんなんだろうね。」

美戎は、お菓子をつまみながらそう呟いた。



「俺、陰陽師の仕事自体、あんまりよくわかってるわけじゃないんだけど…そういえば、ゆかりさんの時代の陰陽師はどんな仕事をしていたの?」

「皆、とにかく勉強をしてた。
あとは、ヨウカイに仕事を教えたり、怪我や病気をしたヨウカイや人間を治したりもしてたな。」

「へぇ…」

俺のイメージしてる陰陽師とはちょっと違ってる気はするけど、ここには陰陽師の力を借りないとどうしようもないような悪いヨウカイもいなかったから、きっと仕事の内容も変わって来たんだろう。



「ゆかりさんの部屋はどこだったの?」

「もっとずっと奥の方だ。」

「行ってみようか?」

「勝手に行っても良いのかな?」

「物を壊したり汚したりしなけりゃ大丈夫だよ、きっと。」

俺達は、屋敷の中を少し歩いてみることにした。
すれ違う陰陽師達も、俺達がうろうろしてても特に注意するようなことはなかった。



先頭を歩いてたゆかりさんがある地点で突然立ち止まった。


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