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安倍川家の屋敷の中はたいそう広いものだった。
下手したら迷ってしまいそうだ。
「あのぅ…ここにいらっしゃる方は、皆、陰陽師さんなんですよね?」
「もちろんそうですよ。
ただ…元々の安倍川家の血筋の者はおりません。
安倍川家の血はとうに断たれており、今、ここにいるのは血のつながりのない弟子達です。
最近では、陰陽師は、皆『安倍川』の姓を名乗ることになっております。」
やっぱり、以前聞いた通りだった。
このゆかりさんが安倍川家の血を継ぐ唯一の存在だと言いたいところだけど、それは秘密のことらしいからもちろん言えない。
「そうなんですか…
それじゃあ、ここには式神や妖はいるんですか?」
「いいえ。
直系の陰陽師には、式神を作ったり使ったり出来たらしいですが、今、そういうことの出来る陰陽師はおりません。
妖と関わることは多いですが、この屋敷には立ち入らせてはおりません。」
「それはなぜなんですか?」
「安倍川家の直系の陰陽師に、妖をとても嫌っている者がおり、その頃から妖を屋敷には入れないようになったということです。」
「そうなんですか…」
陰陽師が妖を嫌うなんて、どこかおかしな話だけれど、きっとなんらかの事情があったんだろう。
ゆかりさんは、家の中を見渡しながら、相変わらず浮かない顔をしていた。
「今日はもう遅いですから、勉強や仕事は明日からということに致しましょう。
さぁ、ここがあなた方の部屋です。
ご予約がなかったため、今夜の食事は町の食堂にてお済ませ下さい。
食事代は皆さんの実費となります。
あまり遅くならないうちに、ここへお戻りください。
あ、衣装が汚れた場合も実費の弁償となりますので、お気をつけ下さいね。」
俺達は言われた通りに町の食堂へ向かい、そしてそそくさと食事を済ませて屋敷に戻った。
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