修行6


「じゃ、母さん、僕、行くから。
父さんにもよろしく伝えておいてね…!」

「ルディ、お待ち……」

母はそう言うと、テーブルの上に積まれた野菜の中からキュウリをつまみ、そっとルディの袋に入れた。



「せめてそれだけはあんたが持ってお行き……
頑張るんだよ。」

「ありがとう、母さん…!」

ルディは家を出ると振り向きもせずに走り出した。
それは、涙で濡れた顔を、家族に見られたくなかったから……



「ねぇ、母ちゃん。
さっきの人……本当に兄ちゃん?」

「そうだよ。」

「えーーー…
なんか、おじちゃんみたいだったよ。」

「そんなこと言うんじゃないの。
兄ちゃんは、辛い修行に耐えたからフケちゃったんだよ、きっと。」

「ふ〜ん。」

「今夜はその野菜で父さんにおでんでも作ってもらいな。
母ちゃんはそろそろでかける準備をするからね。」







ルディは、故郷の村を出た。
行くあても金もないが、ルディの袋の中には家族皆の愛と希望ときゅうりが詰まっている。



(みんな…待ってておくれよ…!
僕、絶対に立派な魔術師になって帰って来るからね…!)



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