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「どうしたんです?
何があったんです?」

和彦さんはすかさずそこで質問を投げ掛けた。
妹さんはそれでも言いにくそうにしてたけど、やがて、ゆっくりと話し始めた。



「兄は……私が兄の言う事を信じていないと気付いたのでしょう。
それで……兄は……電話を変わったんです…義姉さんに……」

「えっ!?
……で、では、あなたは義姉さんと話されたんですか?」

妹さんは俯いたままで小さく頷いた。



「そ、それは、本当に義姉さんでしたか?」

和彦さんも今の話には相当驚いた様子で、声が少し上ずっていた。



「……間違いありません。
信じられないことですが、あっちゃん…と、私の名前を呼びましたし、声も話し方も義姉そのものでした。
義姉は、言いました。
気が付いたら家に戻っていた…と。
自分は死んだはずなのに、なぜ…と、酷く困惑したように話していました。」

「それで、あなたはどう答えられたんですか?」

「どうもこうも……私もわけがわからなくなっていて、何と答えたものやら……
すると、兄がまた電話を取って、奇蹟が起きたんだと言ってすすり泣いていました。
私は、なぜか、義姉さんを他の人に見られてはいけないと兄に言っていました。
誰かに知られたら大変なことになるから、私がそこへ行くまで家から出ないようにと言いました。
信じたわけではなかったんですが…でも、信じていないとも言いきれない…そんなおかしな気持ちだったんです。
とにかく、私はその時一番にそう思いまして……
すぐに兄の許へ行かなくてはと思ったのですが、急なことで仕事がどうしても休めず、明日行くとあらためて連絡をしました所、兄は義姉さんと旅行に行くので家にはいないと言い、詳しいことを聞く暇もなく電話を切りました。
そして、その後は電話をしてもメールをしても兄が出ることはなく……」

そう言って、妹さんはなお一層深くうな垂れた。
その表情は苦しげで、行方不明のお兄さんのことが心配というよりも、もうどこか諦めているように俺には感じられた。



「そうだったんですか……
それで、お兄さんの消息は今でもわからないままなんですか?」

「……ええ。
兄はもう…きっとここには帰って来ないと思います。」

「……と、申しますと…」

「あの時…仕事のことなんて考えずにすぐにここへ来れば良かった。
そうすれば、兄は……」

妹さんはそう言うと、溢れ出す涙をハンカチで押さえた。

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