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「こ、これを俺に?」
「そうだ、持ってみろ。」
ダルシャは、売り場の中から数本の剣に手を伸ばして確認した後、その中の一本を再び手に取りフレイザーの前に差し出した。
フレイザーは、差し出された剣に恐る恐る手を伸ばす。
刃渡りはそれなりに長いが、ダルシャが腰に下げているものよりずいぶんと細身の剣だ。
「どうだ?このくらいならそう負担にはならないだろう?」
「う、うん。
重くはないけど…」
フレイザーは、剣を持ち軽く上下に振った。
「君は、おそらく剣を手にしたことはないと思う。
慣れ親しんだものならば、たとえ記憶をなくしていても身のこなしに現れるはずだからな。
今から剣を始めるなら、このくらいが良いだろう。」
「そうか、俺にはよくわからないから、あんたに任せるよ。」
ダルシャは頷き、その剣を買い求めた。
「さぁ、今日からこれが君の相棒だ。」
「これが、俺の…」
フレイザーは、手渡された剣を腰に下げ誇らしげにじっとみつめる。
「じゃあ、そろそろ行こうか。」
「ダルシャ、ありがとう!
これから、よろしく頼むな!」
「あぁ、だが、稽古は厳しいから覚悟しておけよ!」
必要なものの買い物に出掛けた際に、フレイザーは、ダルシャに剣を教わりたいとの意思を伝えた。
それは、最近、彼の心に少しずつ芽生え始めていた気持ちだった。
この世界では、いつ何時、力が必要にならないとも限らない。
今回のことで、フレイザーはエリオットの魔法が体力を消耗することを知った。
もしも、強敵と戦い、エリオットが体力を失ってしまったら、あとは頼りになるのはダルシャの腕だけだ。
自分がせめてラスター程度にでも戦えたら…
そして、フレイザーはついに念願の剣を手に入れた。
「君が戦えるようになってくれたら、私もずいぶんと助かるよ。」
「今まではあんたとエリオットにまかせっきりだったもんな。」
「実は、私には考えていることがあるんだ。
そのためには、戦力になる者が一人でも多い方が良い。」
「考えていること…?」
フレイザーの問いかけに、ダルシャはゆっくりと頷いた。
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