「おいおい、そんなに急ぐなよ。
魔物が出て来たらどうするんだ!?」

先頭を行くエリオットとセリナに、フレイザーが声をかけた。



「大丈夫だよ。
ここに来る時だって、ほとんど出て来なかったじゃないか。」

「それに、ここなら魔法も使えるから大丈夫よ。
ね、エリオット。」

二人は顔を見合わせ、早足で山を下って行く。



「一体、どうしたんだ?あの二人?」

「さぁな…やけに急いでる感じだな。」

フレイザーとラスターは、エリオット達の行動を少し不審に感じながら二人の後を着いて行った。
二人は休む事もせずただひたすら歩き続けたが、麓まではまだ遠い。



「あ!そうだ!!」

不意にエリオットが立ち止まり、フレイザーの方を振り向いた。



「どうした?少し休むか?」

「フレイザー、板切れを探して!」

「板切れって…」

「わかった!それに乗って麓まで一気に飛んで行くつもりなんだな?」

ラスターの言葉に、エリオットは黙って頷いた。
まだいまひとつ事情のわからないダルシャやセリナも、エリオットから言われた「人が乗っても大丈夫な板切れ」を探してまわる。



「エリオット!」

しばらくして、少し離れた所からラスターの声が聞こえた。
エリオットが駆け付けると、そこには折れた大木が倒れていた。



「どうだ?ちょっと重いか?」

「……やってみるよ。」

エリオットは精神を統一し、呪文を唱え始める。
それと同時にどこからともなくざわざわとした風が吹き始め、木がふわりと浮かび上がった。
感心した様子でみつめるラスターの前で、大木はまたゆっくりと降り始める。



「……なんとかいけそうだよ。」

「ここに人間が5人乗るんだぞ。
大丈夫か?」

「うん…多分ね。」







「さぁ、そろそろ出発するぞ!
皆、しっかりつかまってろよ!」

「本当に大丈夫なのか?」

「エリオット、無理しないでね!」

フレイザーとラスターは慣れたものだが、ダルシャとセリナは不安そうな表情を浮かべていた。



「…じゃあ、行くよ!」

いつもより少し気合いの入ったエリオットの声が響くと、大木はゆっくりと浮かびあがった。



「わぁ!」

バランスを崩しそうになり、ダルシャは思わずフレイザーの背中にしがみついた。


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