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「……あそこだな。」

木陰から顔をのぞかせたダルシャが小さな声で囁き、それに二人が頷いた。



エリオットが予想したよりも少し早くに、三人はようやく草木の海を脱出し、拓けた場所に出た。
そこからすぐに、エリオットの言っていた古びた小屋が確認出来、三人はそれを目にした途端、自然と気が引き締まるのを感じていた。



「これからどうするんだ?」

「むろん、ちゃんと訪問する。」

それを聞いたエリオットが、小さく肩を震わせる。



「なんだ、エリオット?私はおかしなことでも言ったか?」

「う…ん。おかしいかどうかわからないけど、なんか…ね。」

「確かにおかしな話だよね。
人間を憎む凶暴な獣人の所に向かうっていうのに、剣を抜くんじゃなくて、玄関からちゃんと訪ねて行くっていうんだからな。
これで、あと土産でも持ってたら、なおさらおかしかったのに……」

そう言いながら、ラスターは俯いて失笑した。



「ふざけてる場合じゃないぞ。
万一ということだってある。
冗談は、無事にこの訪問がすんでからにしてくれ。」

「ごめんなさい……」

うなだれるエリオットの肩をダルシャは優しく叩いた。




「……謝ることはない。
私も少し緊張しすぎているようだ。
こちらこそ、すまなかったな。」

エリオットは、その言葉に顔を上げて照れくさそうに微笑んだ。



「なんだか、カインの時のことを思い出すな。
あの時と同じだ。」

「あの時は六人だったが今回は三人だ。
こんなことは考えたくはないが…いざという時は……頼んだぞ。」

ラスターはダルシャの目をしっかりとみつめ、深く頷く。



「心配すんなよ。
いざという時は、俺とエリオットが、必ずあんたを助けるから。」

「それはたのもしいことだ。
さて、そろそろ行って来るとしよう。
君達はここにいてくれ。」



一歩一歩、獣人が住むと思われる小屋に向かって歩いて行くダルシャの後姿を見つめながら、早まる鼓動を二人は懸命に抑えようとしていた。


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