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「みんな、疲れただろう。
数日はこの町でゆっくりして、それから願い石を探しに行く事にしよう。
この町は賑やかだし、退屈はしなくてすみそうだぞ。」
夕食の後、ダルシャが皆に向かってそう声をかけた。
「あんたの好きな店もたくさんありそうだもんな。」
ラスターの皮肉にもダルシャは動じることなく、小さく苦笑いを浮かべた。
「では……」
「ちょっと待ってくれ!」
散会を告げようとしたダルシャに、ジャックが待ったをかけた。
「……どうした?ジャック…」
「ちょっと、みんなに話したいことがあるんだ。」
そう言うと、ジャックは深々とかぶったフードを降ろし、初めて皆の前に顔をさらした。
その様子に五人は驚き、ただ、じっとジャックの顔を見つめる。
「エリオット、ラスター…
今まで隠してて悪かった。
……俺…本当は女なんだ。」
「え……?」
「嘘……」
エリオットとラスターは、しばらく放心したようにジャックの顔をみつめていたが、やがて、ラスターが夢から覚めたように、三人の方に向き直った。
「……もしかして、あんたらは知ってたってことか?」
「そうだ…最初にセリナにバレた。
そして、成り行き上ダルシャに話して、そして、フレイザーにはごく最近バレた。」
三人の代わりに、ジャックがラスターに返事をした。
「ひ、酷いじゃないか!
なんで、俺とエリオットには言わなかったんだ!」
「……言いたくなかった。
本当は誰にも言うつもりはなかった…
でも、バレてしまったから仕方なかったんだ。
三人には、俺から口止めを頼んだ。」
「……そうだったの。
言われてみれば、納得出来ることがあるよ。
でも、ジャック……どうして、男のふりなんてしてたの?」
「それは……」
「ジャック!」
フレイザーがジャックの名を呼び、黙って首を振った。
それが、それ以上話すなという合図だということは十分理解しながら、ジャックはあえて言葉を続けた。
「俺は、子供の頃から母さんと一緒に山奥の炭焼き小屋に住んでいた。」
「ジャック、やめろ!」
フレイザーの口調が強いものに変わり、ジャックはそれに小さく微笑みを返した。
「……フレイザー…
俺……みんな話してしまいたいんだ…」
「だけど……!」
フレイザーの腕をセリナが掴み、ゆっくりと頷く。
ジャックのしたいようにさせてあげましょう…
フレイザーにはそんなセリナの声が聞こえたような気がした。
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