「リュックさん…僕は実は孤児だったんです。
本当の親の事は、まるで知りません。
ステファンは、計らずも昔の僕と同じ境遇になってしまった…
たまたま船で知り合った彼と六年ぶりに再会し、そして、こんなことになるなんて…大袈裟なようですが、これは、僕に課せられた運命ではないかと…ふと、そんな風に思ったのです。」

「なるほど、そういうことだったのか…
俺もそういうものは信じる方だから、わかるような気はするぜ。」

リュックの言葉は本心だと思った。
同じ状況になったとしたら、彼はきっとブランドンと同じ選択をしていただろう。



「彼の荷物の中にはとんでもない額のお金が入っていました。
屋敷を買い戻すためのお金だという事はすぐにわかりましたが、ローザンという苗字以外にはその屋敷がどこにあるのかも皆目聞いていなかったのです。
彼自身、その屋敷を見たことはないと言ってました。
元はといえば、彼の両親が屋敷を買い戻そうとしていたそうなんですが、そのために少し無理をしすぎて事業に失敗してしまい、とうとうその夢は叶わないままに亡くなられたとのことでした。
だからこそ、ブランドンは自分でその夢を叶えたいと思ったのかもしれません。
僕は最初は故郷に帰ろうと思っていたのですが、しばらく考えて、彼のその夢を叶えなくてはいけないと思い立ちました。
どこにあるのかさえわからない屋敷を探すのはとても難しいことですが、苗字がわかっているのだからきっと見つかる…そう思ってそのまま旅立ったのですが、二年経ってもまだみつからないのです。」

「二年…!
あんたそんなに長い間、屋敷を探してたのか。」

「ええ…最初の頃はステファンも小さくていろいろと大変なこともありましたが、最近では彼が話し相手までしてくれるようになりましたよ。
彼がいてくれたからこそ、ここまで来られたような気がします。
子供の成長とは早いものですね。」

「そうだったのか…苦労してきたんだな。
……それで、屋敷のことは、他になにかわからないのか?
今は誰が住んでるとか…何か特徴的なこととか…」

「それが、とにかく広い屋敷だということしか聞いてないんです。
彼は元々貴族ですから、きっと立派な屋敷だとは思うのですがそれだけでは…
あ……そういえば、彼の先祖に異国の王家の血が流れているとかいう噂からかなんだかわからないのですが、異国の宮殿風の建物だとも言ってました。」

「宮殿?」

私とリュックはその言葉に顔を見合わせた。


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