「そいつは面白そうじゃないか!」

「やっぱりそう思うか?」

今日、闘技場を訪ねたトミーの話は少し意外なものだった。
ニッキーをプロの格闘家にしないかという話だったそうだ。
つまり、ニッキーや他何名かの格闘家を連れて、いろいろな町を巡業したいという申し出だったそうだ。
そうなると、ニッキーはともかく、ルイス達は闘技場の看板スターを失う事になる。
その代わりに、トミーがここでは知られていないプロの格闘家を連れて来て、ここで試合をさせるということなのだそうだ。
もちろん、ニッキーもずっとよその町にいるわけではなく、ここにも戻って来る。
巡業に出るのは年に数回ということだった。



「知らない町をあちこち旅出来るなんて、楽しみだぜ。
しかも、それで給料までもらえるってんだからな!」

「トミーという男はなかなかのやり手じゃ。
考えることが、アイディアにあふれておる。
あの男は今に大成功するぞ!」

「それで、もうその話は本決まりなのか?」

「あぁ、早速、来月にはトミーが格闘家を連れて来る事になってるんじゃが…
聞いて驚くなよ!
なんと、その格闘家達は女なんだそうだ!」

「お、女の格闘家?!」

リュックの瞳が大きく見開かれた。



「そうじゃ。
アマゾネス軍団と呼ばれるメンバーで、最近すごい人気なんだそうじゃ。
きっと、ここでも人気が出るぞ〜!
早速、チラシを作らなきゃならんな。他にもやることがいっぱいだ。
あぁ、こんな時にマルタンがいてくれたら助かるのにのぅ…」

「済みません…」



ルイスは、新しい興行に胸を弾ませている。
きっと、この闘技場はもっともっと人を呼べる場所に変わっていくだろう。
年を取ってもこんな風にいつまでも自分の仕事に情熱を燃やせるのはとても羨ましいことだ。

マノンの子供ももうじき生まれることだし、これから先の数ヶ月は本当に休む暇もない程、忙しいものになりそうだ。
そんな時に出て行くのはいささか心苦しいが、もう決まったことなのだ。







「長い事、お世話になりました。」

「こちらこそ、いろいろありがとうな!
またいつでも来ておくれ!」

次の日の朝、わざわざハンクが私達を見送りに来てくれた。
マノンとリカールは仲良く寄り添いながら…ニッキーは笑顔で…そして、ルイスとテレーズは目に涙を浮かべ、いつまでも手を振ってくれた。


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