blue18 | ナノ


 空気が冷たく、乾いている。
 待ち合わせの時間より三十分も早く着いてしまった。どこか店に入って待つ気にもなれず、目についた移動販売のカフェでホットコーヒーを買った。それに口をつけたり、カップの側面をカイロ代わりに冷えた手をあたためたりしながら、駅前のベンチに座ってただぼんやりと時間をつぶした。
 ふと、前方から歩いてくる姿を見つけた。
 細い足が迷いなく、まっすぐこちらへ歩いてくる。

「怜ちゃん、久しぶり」

 私の前に立った来栖が無邪気に、待った?と言う。カップルかよ、と私は思い、自然と仏頂面になるのが自分でわかった。

「……来栖」
「ん?」
「寒い」
「ははっ」

 ただ思ったことを仏頂面でそのまま口にしただけなのに、なにがおかしいのかさっぱりわからない。

「それじゃあ、いこっか」



 十二月末。世間はいわゆる年末で、私たちは冬休みだ。どちらにせよ繁華街は人で溢れている。
 お互いに私服で、来栖と人波の中を並んで歩いていることに現実味がない。踵の高いブーツを履いてきたせいかほとんど身長差がなくて、それもまた変な感じがする。

「なんかこれってもん決めてきた?」

 歩きながら、来栖が私を見てくる。

「……実用的なものがいいかなって」
「たとえば?」
「……ライター、とか……」
「もっと高校生らしいもんにしない?」
「じゃあ、あんたはなんか考えてきたわけ?」
「俺はケーキ作るもん。愛をこめて」
「キモイ」

 思いっきり顔をしかめて言うけれど、来栖はおかしそうに声をあげて笑うだけだ。本心から笑っているのがなんとなくわかるので、むかつく。

 来月、年が明けたらすぐに優の誕生日がやってくる。一月五日、優は18歳の私たちより、一つ年上になる。
 買い物に付き合ってほしい、と来栖に頼んだのは私だった。その旨を一言一句そのままメールで送った。そういえば、来栖宛にはじめて私からメールを送った。そんなことはどうだっていいのだけど、返ってきたメールは、『デート?』という一言がハートマーク付きだったので、私は斜め後ろの席を思いきり睨みつけた。
 その日は、終業式だった。担任の長いホームルームと、ストーブのぼんやりとした温熱で、気だるい空気の教室。
 来栖は、笑いを噛み殺すような表情で、ケータイで口元を隠しながらこっちを見ていた。


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