06

素直に謝罪の言葉を口にして、あきらちゃんの涙を指で拭う。ひくひくしゃくりあげる彼の喉。…本当にさっきと同一人物なの?

妖艶な表情で私を見下ろす彼が脳裏に浮かぶ。もしかしたらあれは無理をしていたのかもしれないな、と思った。

涙を拭う私の指をぎゅううと握り締め、あきらちゃんは窺うように上目遣いをする。

「…キスしてくれたら、許す」
「しないよ…」
「じゃあ許さない」
「…」

全くどうしたものか。

綺麗に塗られたマスカラが、ただでさえ長い睫毛を余計に長く見せている。こんなの騙されて当然だ。彼はどこからどうみても完璧な女の子。

だけど、いい加減退いてほしい。いくら彼が小柄とはいえ、ずっと乗っかられているとさすがに重い。

「あきらちゃん、どい…」
「嫌だ!家庭教師はやめさせない!」
「え?」
「駄目!もう無理矢理襲ったりしないからそれだけは駄目!」
「ちがうよ。どいてって言ってるの」
「え、あ…」

ごめんと慌てて私の上から体をどけるあきらちゃん。基本的に素直なのだ。

ようやく解放された体を起こし、ぐちゃぐちゃになった衣服を正す。ああ、お気に入りのブラウスが皺だらけに…

髪の毛を軽く手櫛で整えると、ずずっと鼻を啜る彼に正座で向き直った。何か不穏な空気を悟ったらしいあきらちゃんは、気まずそうに視線を私から逸らす。

「さて、あきらちゃん」
「…」
「先生とお話をしましょう」
「…」
「まず、何か言いたいことはある?」
「…先生、すき」
「違う」

びくっと体を揺らし、私と同じようにこちらを向いて正座。

彼はしばらくうろうろとベッドの上と私の顔を交互に見てから、小さな声でこう言った。

「ご、ごめんなさい」
「反省してる?」
「してる…」
「もうしない?」
「したい…」
「じゃあ私もうここには来ない」
「うそ!しない!絶対しない!」

縋り付くように手を伸ばしてきたので、私はその手を触らないでと振り払う。あきらちゃんは傷ついたような表情でまた涙を溢れさせた。


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